「官製値下げ」で歪む通信市場のツケは国民に跳ね返る
通信市場は、かつてNTTドコモが6割以上のシェアを握っていた「1強2弱」時代から、20年かかって大手3社のシェアがようやく拮抗する「3強」時代になったが、「NTT1強」の独占状態に戻れば、携帯電話の料金が再び上昇する局面を迎えるかもしれない。
さらに、競争がなくなれば、次代の社会インフラとなる5G(第5世代移動体通信)の普及や、次世代の6Gへの投資にも影響が出て、国際舞台での立ち遅れは避けられなくなる。
NTTグループの「一人勝ち」を招きかねない「官製値下げ」は、一時的な効果こそあれ、さまざまな難題を内包しており、限界があるのだ。
NTTドコモの完全子会社化を皮切りとする「大NTT」の復活について、KDDIの高橋誠社長が通信各社を代表するように「NTTの経営形態の在り方は、通信市場全体の公正競争という観点から慎重に議論されるべきだ」と言明したのは、きわめて真っ当といえる。
携帯電話の料金が下がって家計の負担が減ることは歓迎できるが、「官製値下げ」が将来的に日本の通信市場を歪める事態になれば、そのツケは回りまわって国民に跳ね返ってくる。