「大NTT」復活に菅政権の後押しを目論む深謀遠慮

値下げ合戦に巻き込まれることをもっとも嫌っていたNTTグループが自ら渦中に飛び込んだのは、NTTドコモの立て直しが喫緊の課題となったからだ。

売上高や営業利益でKDDIやソフトバンクの後塵を拝し業界3位に転落したNTTドコモにとって、価格破壊の「アハモ」はトップに返り咲くための起死回生策となる。

約600万人とされる「ギガホ」ユーザーの大半が「アハモ」に切り替えた場合、年間の減収幅は2000億円を超えるとみられるが、現状に甘んじることは「絶対王者」を宿命づけられたNTTグループのプライドとメンツが許さなかった。

ただ、NTTドコモの立て直しは表面的な理由の一つにすぎない。

菅首相の真意を忖度して値下げ競争の先兵役を務める決断をした背景には、その引き換えとして、政府に「大NTT」復活へ筋道をつけてもうらおうという深謀遠慮がある。

「公正な市場競争の確保」錦の御旗で、切り刻まれた歴史

振り返ると、1985年の通信自由化とともに、日本電信電話公社(電電公社)が民営化されたNTTは、1988年に情報サービスのNTTデータ、1992年に移動体通信のNTTドコモが切り離され、1999年には持ち株会社の傘下で地域通信のNTT東日本・西日本と長距離通信のNTTコミュニケーションズに分離・分割された。

それは、「公正な市場競争の確保」という錦の御旗の下で、独占企業が切り刻まれていく歴史だった。

だが、固定通信や音声通話が主流だった時代は遠くに過ぎ去り、今やSNSが隆盛を極め、5Gのスマホや大容量のデータ通信へと市場環境は様変わりしつつある。しかも、通信会社の競争は今後、コンテンツやライフスタイルサービスなど非通信分野でシノギを削ることになるともいわれる。