「日本ブランド」のイメージ向上になる

「はやぶさ2」のカプセル帰還後の記者会見で、「人類への生活にどのような影響をもたらすか」という質問が出た。プロジェクトの担当者たちは「将来、宇宙の鉱物資源利用を可能にする」「地球に衝突可能性がある小惑星などから地球を守る『惑星防衛』に役立つ」などと答えた。一般の人から見ると、「かなり先のこと」と思わせる話だ。

太陽系の成り立ちや宇宙の起源などの研究に役立てられることはもちろんだが、効果が大きいのは、日本の宇宙開発ブランドのイメージ向上だろう。政府と産業界は、海外へ宇宙技術の売り込みを続けているが、「あの、『はやぶさ』の日本」と分かってもらえる。月、火星探査などを国際協力で進めていく際にも、独自の技術を持っていることが、交渉を有利に進める「武器」になりうる。

「挑戦的なことをやらなければ実用も生まれない」

イノベーション(技術革新)とよく言われるが、何がヒットするか最初から分かっているわけではない。「はやぶさ」初号機を率いた川口淳一郎さんは、「はやぶさ」の節電技術を、エネルギーの有効利用や家庭の節電などに生かそうと試みている。

宇宙開発はすぐに役立つものではないが、一般の人々から支援してもらうためにも、地上生活に役立つ成果は積極的に使う必要がある、と考えるからだ。だが「それは本来の目的ではない。挑戦的なことをやらなければ、実用も生まれない」と言う。

日本の科学技術力低下が指摘されて久しい。すぐに産業や経済に直結しなくても「基礎研究」を重視する必要性がノーベル賞研究者などから唱えられている。それと似た構図が宇宙開発の世界にもある。

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