次々と上場廃止、倒産に追い込まれる中国企業

サイノ・フォレストの一件と並んでマディ・ウォーターズが注目を集めたのが、2013年の中国のサイバーセキュリティとモバイル・アプリケーション会社、NQモバイルに対するカラ売りだ。ニューヨーク証券取引所に上場していた同社の株価は約25ドルだったが4ドル前後まで下がり、2015年4月に共同CEOが辞任に追い込まれた。

これら以外でもマディ・ウォーターズは数多くの中国企業のカラ売りで成功し、「中国企業の殺し屋」の異名をとっている。中国河北省の製紙会社、オリエント・ペーパー(2010年にカラ売りし、株価は80%下落)、中国大連市の汚水・ガス処理業のリノ・インターナショナル(同、上場廃止)、中国本土で広告業を展開していたチャイナ・メディア・エクスプレス(2011年、上場廃止)、上海のデジタル広告大手、フォーカス・メディア・ホールディング(同、上場廃止)、シンガポールの食品会社オラム・インターナショナル(2012年、株価21%下落)、香港の資源・農産物商社、ノーブル・グループ(2015年、上場廃止)、乳製品製造のチャイナ・フーシャン・デイリー(2016年、倒産)などの案件で、圧倒的な実績を上げた。

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訴訟にも耐えうる正確で高い調査能力

カラ売りの利益は、カラ売りした価格と買い戻した価格の差額から、借株料、経費、売買手数料を差し引いた残額だ。借株料は通常年率0.4~1%、需給がひっ迫した場合は5~10%。売買手数料は0.05~0.4%程度。したがって一番のポイントは、どれだけ株価が下がるかだ。

カラ売りファンドは、カラ売りをしてから分析レポートを公表し、株価を下げてもうける。ただし会社の内部情報を使うと、インサイダー取引になるので、有価証券報告書や統計など、公になっている情報を徹底的に分析し、名誉棄損訴訟にも耐え得る正確で緻密なレポートを書くことが必要だ。

サイノ・フォレストをカラ売りする際、マディ・ウォーターズは、法律・金融・製造業などの専門知識のある10人のチームにほぼフルタイムで2カ月以上も現地調査をさせ、関係機関や取引先への聞き取り、1万ページ以上の関係文書のチェックなどを行った。