庶民の生活は楽になりそうにない

5月、国内195の食品メーカーが行った食品値上げは417品目だった。6月は614品目に増加した。足許で、“物価の優等生”と呼ばれた、もやしや卵の値段も上昇している。広い範囲で、価格上昇になかなか歯止めがかからない。

今年の夏も“値上げラッシュの夏”になりそうだ。その背景にあるのは、主に人手不足やエネルギー価格、さらには一部の穀物価格の上昇がある。6月中旬、中東の紅海でフーシ派による攻撃で、タンカー運賃も上昇した。それはいずれ原油価格の上昇につながる。

物価上昇に対する警戒感は、政府・日銀内部でも高まっている。7月、日銀は金融政策を修正し、国債の買い入れ額を減らすとみられる。財務省は金利上昇に備え、国債の発行計画を見直す方針と報じられた。

苦境映す小出しの修正 金融政策決定会合後に記者会見する日銀の植田総裁=2024年6月14日午後、日銀本店
写真提供=共同通信社
苦境映す小出しの修正 金融政策決定会合後に記者会見する日銀の植田総裁=2024年6月14日午後、日銀本店

低インフレ、超低金利という過去30年以上続いた、日本経済のパラダイムは変わりつつある。物価上昇分の賃上げがないため、わが国の実質賃金は増えていない。当面、私たち庶民の生活は楽になりそうにない。

いちばん安い「もやし」が2倍以上に上昇

過去2年に続き、今年の夏もモノからサービスまで値上げが続きそうだ。肉類やもやしなどの生鮮野菜、卵、菓子類、冷凍食品などの食料やコーヒー、さらにウイスキー、トイレットペーパーや洗剤などの日用品、自動車などの耐久財、飲食、バス料金などのサービスも値上げが続く。企業間の取引でも物価上昇圧力は高まっている。業務用の海藻類や汎用合成樹脂の原料であるポリスチレンの取引価格は上昇している。

“物価の優等生”と呼ばれた品目の価格も上昇している。代表例はもやしだ。もやしは“スーパーで一番安い野菜”とも呼ばれてきたのだが、最近、それが少し崩れつつある。

家計調査などを見ると、1990年代以降、国内のもやし価格は15~30円程度(1袋、200g)で推移した。ところが、足許、その価格が40円前後になっているようだ。今後、さらに値上げを検討している生産者も多い。

卵の価格も不安定だ。2022年秋に、鳥インフルエンザの発生で供給は減り、卵価格は上昇した。2023年後半、供給が徐々に回復し価格上昇は弱まったが、年初以降は再度、卵価格は上昇傾向を辿っている。