資源が上がり、物流費が上がり、輸入物価がさらに上がり…

エネルギー資源の上昇は、物流の料金を押し上げる。紅海での商船攻撃で一時鈍化したタンカー運賃も上昇し始めた。原油価格の上昇などで肥料の生産コストも増えた。国連食糧農業機関(FAO)によると、前月比で5月の穀物価格は6.3%、乳製品は1.8%上昇した。世界的に供給体制の不安定化懸念から、在庫を積み増す企業は増えているようだ。

米国では想定以上に金利が上昇するリスクも高まった。連邦準備制度理事会(FRB)の想定以上に労働市場はタイト気味であり需要も旺盛だ。6月、米金利の先高観から、ドル/円の為替レートは161円台に下落した。円安は、輸入物価の上昇をもたらすことが懸念される。

エネルギー資源や穀物などの価格上昇、さらには円売り圧力で、わが国の輸入物価は上昇する恐れがある。今後も消費者物価は上昇傾向を辿りそうだ。政府と日本銀行はそうした展開に警戒を強めている。

日銀はついに金利上昇を促す方針へ

日本銀行は7月に開催される金融政策決定会合で、「今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定する」と発表した。月間6兆円規模の国債買い入れを減らすことで、日銀は物価の上昇に合わせて金利上昇を促すものとみられる。7月以降、日銀が利上げを行う可能性もある。緩和的な金融政策の修正で、いくぶんか円売り圧力は弱まるだろう。それは、一時的に輸入物価の上昇を抑えるために必要だ。

金利上昇リスクに対応するために、財務省は国債の発行年限を短期化することを検討するという。一般的に、残存期間が長い債券のほうが金利上昇時の価格下落率は大きい。財務省は、投資家の金利上昇警戒感に配慮して政策経費を調達し、政府の利払い負担の抑制も目指しているとみられる。

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これからも物価上昇で金利は上昇するだろう。わが国で、変動型住宅ローン金利や企業向けの貸出金利が上昇する可能性は高まる。金利が上昇すると、家計、企業の利払い負担は増える。経済がデフレ気味に推移し超緩和的な金融政策が続いた環境から、モノやサービスの価格と金利が上昇する局面へわが国経済の状況は変化しつつある。