「結婚詐欺」は罪に問える?

刑法の詐欺罪は経済犯なので、金品をだまし取る行為がなければ、刑法上の詐欺にはなりません。「結婚するつもりがないのに、結婚をエサに金品をだまし取った」ということが必要です。

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そのため、仕事や学歴、年収などについて嘘をつかれていても詐欺にはなりません。

また、結婚できると一方的に信じて肉体関係を結んでも、犯罪にはなりません。

刑法の詐欺罪は、次の点を満たすかどうかによって判断されます。

・人をだましたり、嘘をついたりする
・だました被害者に勘違いをさせる
・被害者が勘違いのために財産を渡す
・加害者が被害者の財産を受け取る

刑法の「詐欺罪」が認められるには、加害者の行為が上記4つをすべて満たし、それらに因果関係があることを証明する必要があります。

上谷 さくら(著)、岸本 学(著)、Caho(イラスト)『おとめ六法』(KADOKAWA)

たとえば「だますつもりはなかったが、被害者が勘違いをして代金を支払った」という場合は詐欺とはみなされません。

詐欺は証明することが難しい犯罪です。加害者側が「だますつもりはなかった」「被害者が勘違いしただけ」と主張した場合、そうでないことを証明するのがどうしても難しいためです。被害者が複数いるのであれば、証明がしやすくなる場合があります。

民事訴訟の場合、相手に支払いをした内容や経緯、代金の請求の手順などのさまざまな要素に問題がなかったかどうかをさまざまな角度から検証し、契約の無効や取り消しを主張していくことになります。

「自称620万円」の男性が年収を詐称していたら

【事例1】
28歳の女性。マッチングアプリで、年収620万の38歳の男性と知り合った。年は上だが、話しやすく意気投合。気になるのは、やたら高級なレストランに行きたがるわりに、「今は結婚資金を貯めておきたいから」などと言い、私に奢らせることだ。
しかし、それ以外は気になるところはなかったので、順調にお付き合いを進めていた。いよいよ結婚の話になったが、そのとき実は、相手は年収200万円で離婚歴があり、元妻が引き取った一人息子のために養育費を支払っているということがわかった。
相手の男性からいままで払った食事代と慰謝料を取りたいが、可能か?
【ANSWER】
相手にご馳走したことは、「贈与」となりますので、食事代を取り戻すことはできません。また、年収について嘘をついていたこと、離婚歴があること、養育費を払っていることについて黙っていたことは、人としてどうかという問題はともかく、その事情だけで慰謝料を請求することは難しいと思われます。女性が、その男性の言葉を信じて積極的に結婚に向けて相応の準備を進めて出費をしていたり、婚約が成立して仕事を辞めていた等の事情があれば、請求できる可能性があります。