マッチングアプリは希望に沿う相手が見つけられるが、そこに書かれている経歴や年収が本当だとは限らない。弁護士の上谷さくら氏は「結婚前にパートナーとよく話し合うことが大切だ。そうでないと『結婚詐欺』などのトラブルに発展する可能性がある」という――。

※本稿は、上谷さくら、岸本学『おとめ六法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

ブーケ
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まずは「法律婚」について知っておこう

結婚前と結婚後で一番変わることは、結婚して夫婦になると、法律によってさまざまな義務や責任を負うことです。たとえば、次のような義務があります。

・夫婦の協力義務(夫婦は互いに協力して生活しなければならない)
・夫婦の相互扶助義務(夫婦は互いに養わなければならない)
・夫婦の貞操義務(夫婦は互いに第三者と性的関係を持ってはいけない)

これらは、夫婦として「当たり前」のことと思えますが、ひとたび夫婦関係が険悪になったとき、法律は以下のようにあなたを拘束します。

・相手が無職になり、あなたにしか収入がなくなったとき→「相互扶助義務」によりあなたが相手を養わなければならない
・相手以外の異性にときめいたとき→「貞操義務」により恋愛できない

以上のような義務を免れるには、離婚という手続きを経る必要があります。結婚前のように、一言メッセージを送って別れる……ということはできません。

結婚とは、「相手と家族になる」ということです。「家族」とは、そのメンバーを一番近くで支えてくれるべき人々とされます。「家族」が簡単に離れたりひっついたりできてしまうと、メンバーを支えることはできないという考えからです。

結婚にメリットってあるの?

法律婚の場合、一方の配偶者が死亡すれば、他方が死亡した配偶者の相続人になります。また、法律婚の夫婦の間に生まれた子どもは、認知なしに夫の子どもと推定されます。

さらに、法律婚の場合、所得税法・相続税法(贈与税)上の配偶者控除が受けられるというメリットがあります。これは、事実婚の場合は受けられません。また配偶者に対して贈与をした場合の配偶者控除も、事実婚の場合は適用されません。

日本人が外国人と法律婚をすれば、外国人に在留資格が生じえます。また、医療機関によっては、手術などの合意を、親族のほか法律婚のパートナーに限定している場合があります。しかしこれは法律で定められているわけではありません。

【あなたを守る法律】
民法 第752条 同居、協力および扶助の義務
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
民法 第760条 婚姻費用の分担
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
民法 第761条 日常の家事に関する債務の連帯責任
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。
ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。