米国を多国間の経済連携に巻き込む意気込みで

米大統領選挙におけるバイデン氏の当選は、わが国経済にとって重要だ。安全保障を米国に頼るわが国にとって、国際協調を重視する人物が米国の最高意思決定権者に就くことは大きい。それを足場にして、わが国は、米国をより大きな多国間の経済連携に巻き込むほどの意気込みをもって、アジア新興国など国際世論との関係強化を目指すべきだ。

経済面で重要なのは、わが国が米中をはじめ、世界から必要とされる技術を生み出すことだ。現状、中長期的に需要の拡大が期待される半導体やバッテリーなどを支える素材分野を中心に、わが国は競争力を保っている。

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例えば、韓国のサムスン電子などはDRAMなどの世界販売シェアは高いが、その生産に不可欠な半導体製造装置や高純度のフッ化水素はわが国に頼っている。中国も同様だ。そうした強みがあるうちに、政府は企業の取り組みを支援して、環境対策や次世代の高速通信を支える技術やソフトウエアの創出を目指す必要がある。それが、わが国の競争力向上を支える。

バイデン当選は日本にとって大チャンス

そうした取り組みは、外交面においてわが国が世界経済の中で重要性高まるアジア新興国との連携強化に資するだろう。わが国政府は、インフラ開発支援などアジア各国との関係強化に必要な取り組みを積極的に進めるべきだ。

アジア新興国との信頼関係の強化は、わが国の国際社会における発言力向上につながり、国際連携を目指すバイデン次期政権との関係の深化に寄与するだろう。このように考えると、米国大統領が国際連携を重視するか否かは決定的だ。

足元、国内外で新型コロナウイルスの感染者が増加し、世界経済の先行き不透明感は高まっている。ワクチン開発の期待は高まっているが、実際に接種した際の副作用や供給体制への不安は残る。

また、わが国には米中の大手ITプラットフォーマーに匹敵する企業がなく、景気回復には数年の時間がかかるだろう。実体経済に比べて国内外の株価は高すぎる。今すぐではないにせよ、いずれ株価の調整は避けられないだろう。わが国の金融政策も限界だ。

そうした懸念材料がある中、わが国にとってバイデン氏の当選確実は自力で国際世論との関係を強化し、経済の安定を目指す重要な機会といえる。

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