「再生可能エネルギーの利用を増やす」

経済政策に関しても、トランプ氏とバイデン氏の政策方針は違う。特に、環境面への取り組みは対照的だ。一方で、経済政策の先行きには読みづらい部分もある。

トランプ政権は、石油などエネルギー産業の成長を重視し、クリーンエネルギーの利用促進や、国際社会が重視する気候変動への取り組みに消極的な姿勢をとった。背景には、リーマンショック後から2014年の年央まで、シェールガス開発が進み、鉱工業生産や雇用が増加したことがある。それは、米国の緩やかな景気回復を支えた要因の1つだ。

それに対して、選挙戦の中からバイデン氏は、EV(電気自動車)の充電ステーションなど、環境に配慮したインフラ投資を進めることによって雇用の創出を目指すと主張してきた。バイデン氏はパリ協定への復帰も重視している。

10月22日に実施されたテレビ討論会は、両者の経済(産業)政策の違いを確認する良い機会だった。討論会の中でバイデン氏は石油産業への補助金を止め、再生可能エネルギーの利用を増やすと述べた。

トランプ氏は、バイデン氏の政策が実行されれば石油産業の雇用が失われると批判した。現在の米国にとって、雇用環境の悪化は何としても避けなければならない。雇用環境の悪化は個人消費の下振れだけでなく、経済格差を拡大させ社会心理を悪化させる。

未来の都市交通
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経済政策は外交政策よりも不透明

環境対策は中長期的な取り組みだ。目先の所得・雇用環境の安定のために、バイデン氏にとっての財政支出の重要性は増すだろう。ただし、財政政策の詳細判明には、2021年1月20日に予定されている大統領就任と、その後の議会での政策議論を待つ必要がある。

金融政策面ではFRBが低金利環境を重視するだろうが、ねじれ議会の継続が想定される中、財政政策に関しては今後の議論を確認すべき点が相対的に多い。

それに加えて、2016年の大統領選挙でトランプ氏を支持した有権者にも、バイデン氏は配慮しなければならない。今回の大統領選挙では、ラストベルトに含まれるペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガン州にてバイデン氏が勝利した。

大統領選挙後、バイデン氏がTPPに言及していないのは、ラストベルトの有権者への配慮があるからだ。11月下旬の時点で、バイデン氏の経済政策には、外交政策よりも不透明な部分がある。