手頃な価格と高い品質・機能を両立させるために、同社では従来の製造小売業の事業モデル(SPA)に留まらず、物流機能を付与し、商品の企画から原材料の調達、そして製造・物流・販売に至る一連のプロセスを、「製造物流小売業」という仕組みにして確立していきました。

バブル崩壊からリーマン・ショック後の不況を経ても成長を続けられた理由として、似鳥昭雄会長は「世間とは逆を行くことだ」と指摘しています。

好況と不況は繰り返します。バブル時は土地や建物の価格は倍以上に上がりますが、不況になれば半値になります。このサイクルを理解してから、好況の時は投資を半分に抑え、不況になったら投資を2倍にして土地や建物を積極的に取得していくという決断を下します。

景気が悪くなるのはいつかを、常に調査

バブルが崩壊した1993年に、土地と建物は3割から5割まで値下がりしましたが、そのタイミングでニトリは北海道から本州に進出を果たします。

ニトリ外観(撮影=宇佐見利明)

ニトリは2008年9月に引き起こされたリーマン・ショックを予見し、その備えもしていました。2008年の年明けには手持ちの外国債券を全て売却し、5月には取り扱い商品の1000品目で値下げ宣言を行い、想定を大きく超える規模で売り上げを伸ばしていきました。さらにリーマン・ショック以降、3カ月おきに波状的に値下げを行い、さらなる好業績につなげます。

先を読む秘訣は、次に景気が悪くなるのはいつかを、常に調査し続けることだとし、景気が悪くなったほうが、ニトリにとってはチャンスが多いと似鳥会長は指摘しています。投資が容易になり、優秀な人材が採用できるからです。逆に景気が良い時は好材料が生まれないとも言及しています。

好況時には、同業他社も業績は向上します。不況下では競争相手の業績は下降し、場合によっては倒産する場合もあります。そんな中でニトリは不況を経るごとに、市場占有率を向上させていきました。

コロナ禍でも続くニトリの快進撃

同社が景気の先を読む具体的な方法として実践しているのは、米国経済の定点観測です。同社では毎年5月と10月の年2回、米国の市場動向を知るため視察に赴き、年間におよそ1200人の社員がアメリカで研修を行っています。

アメリカは世界経済を牽引し、時代の最先端にいます。アメリカの現状を見れば、日本の10~15年先が見えてくるので、半年ごとにアメリカを訪れ、その変化と潮流を感じることが大事だとも指摘しています。

近年同社が注目しているのは、ネット企業はリアルを強化し、リアル企業はネットを強化するトレンドです。Amazonは食品スーパーのWhole Foodsを傘下に収め、他方WalmartはM&Aによってネット分野の新興企業を傘下に入れてノウハウを蓄えています。