しかし、携帯電話は、個人情報の塊だといわれて久しい。電話帳を見れば、仕事関係や交友関係が一目でバレる。その人に、何月何日何時何分、誰からどのような連絡があったか、その人が誰に発信したのかもメモリに残されているのだから、人間関係の濃淡まで筒抜けだ。こうした個人情報を盗み取る行為を、犯罪として取り締まらないのは、なぜだろうか。
宮本弁護士は「携帯電話のメールの覗き見が実際に問題になるとしても、浮気がバレるなどのプライベートな場面が大半です。何か大きな社会的問題でも生じない限り、法規制の動きは起こらないと考えられます」と話す。
その一方、携帯電話に保存された情報を勝手に覗かれたことで、プライバシーが侵害され、精神的な苦痛を受けたとして、民事上の慰謝料を請求する余地はあるという。
「ただ、慰謝料が認められるとしても、せいぜい数万円から10万円程度でしょう」(宮本弁護士)
それでは、他人の携帯電話を覗くとして、どの段階からプライバシーの侵害が発生すると考えられるのだろうか。
宮本弁護士の説明によると、メールの内容まで読まなくても、いつ、誰からメールが届いたのか(誰にメールを出したのか)のリストを覗いただけで、その人のプライバシーを侵害することになり、慰謝料の支払いを求められる可能性があるとのことだ。通信の秘密の保障は、通信の内容だけでなく、通信そのものの「存在」にまで及ぶためである。
とはいえ、不貞の慰謝料に比べれば、はるかに少額。メールの覗き見より、浮気のほうが「重罪」なのだと心得たい。