早速「ぽじれん」から。これは「良いことを思い浮かべる習慣」

ストレスをためやすい考え方や行動の癖を修正する方法を「認知行動療法」と呼ぶ。清水教授は心の健康づくりとして、「ぽじれん」「ここれん」という2種類の5分でできる簡易版・認知療法を提唱している。

早速「ぽじれん」から。これは「良いことを思い浮かべる習慣」だ。

「脳は悪いことを記憶して、良いことを忘れます。怖いこと、嫌なことを2度と忘れないのは、古来動物として生存に有利だったためです。しかし、現代人にとってはつらいことなので、『悪いこと』の思い出と同じ数、せめて『3つの良いこと』を思い出して心のバランスを保ちましょう」(清水教授)

具体的には1日(または1週間)を振り返り(1)できたこと、(2)楽しかったこと、(3)感謝することを書き出してみよう。いずれも小さなことで構わない。例として(1)朝、規則正しく起きることができた、(2)コーヒーが美味しかった、(3)家族がご飯を作ってくれた、同僚にテレワークで手伝ってもらった、といった具合だ。

もう1つの「ここれん」は、「7つの質問」(表)に答える形でストレスを捉えなおすもの。

まず自分のストレスや悩みは「何がどうなっていることか」を短文で書き出し、その“本当度”を数字で表す。半信半疑を50%、絶対本当と信じているのを100%とすると、どれくらいの数字だろうか。次にその悩みとあえて正反対の状況を想定し、そう言える“根拠”を探してみる。例えば「誰々が自分を嫌っている(と考える)」ことが悩みなら「その人と仲が良い(その人が自分を嫌いではない)と感じられることはないか」と思いを巡らす。「会えば挨拶をしてくれる」「質問したらメールを返してくれた」といったことがあれば、「それほど関係は悪くない」と思えるかもしれない。

「腰が痛い」という身体的な悩みであっても、「腰は痛くない」という反対の考えのもと「できたこと」を挙げてみよう。「散歩に行くことができる」「入浴後は痛みが軽くなる」などというように自分の生活を振り返り、「反対の根拠」を見つけたい。

「例文にあるように、仕事で失敗をして落ち込んでいる場合などでも、誰かが認めてくれたところがあるなら、それを根拠として『失敗ではない』と考えてもいいし、明らかなミスであれば『失敗は成功のもと』と切り替えるのもOK。昔話の一休さんが『このはし(橋)、渡るべからず』と書かれているのを見て、はし(端)ではなく橋の真ん中を通るというトンチで返したように、発想を転換することが大切です」(同)

質問に答えることで気分が改善する人が多いという。凝り固まった体を伸ばすようなイメージで、清水教授は「心のラジオ体操」と名付ける。心の柔軟性を目指して毎日の習慣としたい。