生活習慣病のエキスパートとして知られる池谷敏郎医師が、「老い」を止めるための独自のメソッドをまとめた『老いは止められる』(エクスナレッジ)を上梓した。年を取るとともに「眠れない」「眠りが浅い」と悩む人が増えるが、「不眠もどき」に安易な服薬は危険、かえって老化が進行する結果になるというのだが……。(第2回/全2回)
※本稿は、池谷敏郎『老いは止められる』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
睡眠導入剤の処方の前に必要なこと
中高年になると「眠れない」「眠りが浅い」といった訴えが増えてきます。そして、病院でそうした訴えをする患者さんに対して、あっさりと睡眠導入剤が処方されることはめずらしくありません。
しかし、私はそうした患者さんたちに対しては、すぐに薬を出すことはありません。まずは、次のような質問をします。
「コーヒーや緑茶を毎日どれぐらい飲んでいますか?」
「朝起きる時間は何時ですか? 何時に寝ていますか?」
「昼寝はしますか? 何時にどれぐらいしていますか?」
「1日どれぐらい体を動かしますか?」
この質問に答えているあいだに、だんだん患者さん自身にも、眠れない原因が分かってくるようです。
コーヒーや紅茶、緑茶でカフェインを摂りすぎていたり、就寝・起床時間が乱れていたり、昼寝をしすぎていたり、昼間の活動量が少なかったり──そうしたことが複合的に原因になっていることが多々あります。
「ノンレム睡眠」は若い時代の3分の1以下に
これらに当てはまらない場合は、次の質問をします。
「眠れなかった次の日、昼間に眠気やだるさはありますか?」
特に当てはまらない場合は、睡眠がそこそこ足りているということ。たとえ前日に6時間しか眠っていなくても、睡眠中に何度か目が覚めたりしても、翌日に元気なら深刻な問題はありません。
人間は加齢にしたがって、睡眠時間が短く変化するものです。健康な方でも、一晩に1~2回目が覚めたり、早朝に覚醒したりすることが増えてきます。しかしそれは、自然な加齢変化です。
20代と比べると、70代のトータルの睡眠時間は1時間も短くなって6時間弱になり、さらに脳が休息する深い睡眠状態を指す「ノンレム睡眠」は3分の1以下になっています。