薬に頼るのは「最終手段」

睡眠薬の処方は10秒で終わりますが、生活改善の指導には10分かかります。だから、私には安易に思えるような睡眠薬の処方が後を絶ちません。

いちばんの問題は、気軽に飲むには、睡眠薬は依存性が強すぎるということです。20代、30代の若い世代の人たちにも、睡眠薬依存に陥っている人が少なくありません。

そうした方々にも、同じアプローチで依存から抜け出すお手伝いをしています。元気いっぱいの時期なのに、昼間にボーっとしているなんて人生大損ですよ、とお話しています。

よい眠りを得るための薬が、多くの方の老化を早めているように思えてなりません。私は、まずは生活指導を行い、患者さんの健全な体の働きを取り戻してもらうことこそが、医療が本当に果たすべき役割ではないかと思っています。

みなさんには、薬に頼る前に、ぜひ最初に生活習慣の見直しをしてもらいたいと思います。薬に頼るのは、最終手段です。

池谷式「老いない快眠メソッド」

中高年の安眠に役立つ、生活改善の具体的指針をいくつかご紹介します。睡眠薬に頼る前に、取り入れやすいものからぜひ実践してみてください。

■快眠メソッド① 睡眠時間を最優先でスケジュールする

忙しい時期、つい一番に削ってしまうのが睡眠時間、という人は多いようです。お気持ちは分かりますが、医師の立場から言わせてもらうと「忙しいときほど、一番に十分な睡眠時間を1日の中に最優先でスケジュールする」ことを習慣にしてほしいのです。先に睡眠時間を予定に入れ、余った時間で仕事をする、といったイメージです。

睡眠不足は脳のパフォーマンスを下げ、体力も気力も奪います。その状態で多忙なタスクをこなしても、通常よりも時間がかかるし質も下がる可能性が高いでしょう。であれば、しっかりと睡眠をとり、脳によく働いてもらって体力も十分なほうが仕事は早く終わり、量もこなせるはずです。

仕事が立て込む時期や、小さなお子さんの育児で夜に十分な睡眠がどうしてもとれないときもあるでしょう。そんなときは、昼間に10分、15分の仮眠をとることをおすすめします。