なぜ今の経営者は志も気概も弱くなったのか
語学力や実務的なスキルの面では、今の経営者のほうが上かもしれない。しかし戦後第一世代が持っていたような世界を相手にする気概、心通じるまで徹底的に話し合うような意志や意欲に関しては、決定的に劣っているように思える。
中国進出などグローバル化を推し進める企業はある。だが、それは少子高齢化で国内マーケットが頭打ちだとか、人材がいないとか、円高で労働コストが上がったという理由で活路を求めたからで、「そこに顧客がいるから」「世界がわが市場」という強い思いで出ていくわけではない。
松下幸之助さんの義弟である井植歳男さんが創業した三洋電機は、早くから世界志向が強かった。「国内では兄貴にかなわないだろうから、俺は3つの海(スリー・オーシャン)を股にかけて勝負する」ということで「三洋」と名付けたぐらいだ。パナソニックによる買収話を墓の下の井植さんはどんな気持ちで聞いたのだろうか。
顧客に、地域に、世界に受け入れられるグローバル化のプロセスというのは、構築するのに少なくとも20年はかかる。今どき、それだけのビジョンと気概、そして根気を持って事業に当たっている経営者はどこを探しても見つからない。戦後第一世代と今のジェネレーションでは人種がまったく違うようにすら見える。
では、どこで違ってきたのか。偏差値教育が導入されて以降だと私は考えている。偏差値の最大の問題点は、それがあたかも人間の能力や価値を規定しているかのような錯覚を与えることだ。自分はこんなレベル、こんな分際だからと思い込み、分相応な道を歩もうとする。