子育てで知っておくべき母乳に関わる功罪

「母乳で子どもを育てたい」というのは親として自然な思いであり、誰しもそのほうが子どもの成長にとっても有益だと考えると思います。しかし残念なことに、母乳だけでは子どもの健康リスクが高まってしまうという逆の現象が起こっていることがわかります。

原因は明白です。母乳中のビタミンD濃度は母体の血中ビタミンD濃度によって決まるため、妊娠可能年齢の女性の血中ビタミンD濃度が低いことが、乳児のビタミンD欠乏状態を招いているわけです。けれど母乳は本来、免疫系のタンパク質の供給源であることなど多くのメリットがあります。

つまり、次世代にさまざまな健康リスクを残さず、母乳のメリットを生かすためにも、まずは母親となる女性の血中ビタミンD濃度を適正値に保つことが大切なのです。

ビタミンDはほぼ全身の機能で重要な働きをする

くる病予防につながることからもわかるように、「ビタミンDは骨を作る大切なビタミン」であると教わった覚えがある人は多いのではないでしょうか。

満尾正『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)

もちろん、これは今でも変わらない真実です。骨は体を支える以外にも、カルシウムやリンの貯蔵庫としての役割を果たしており、これらはビタミンDの作用によって代謝がコントロールされ、最適な血中濃度が保たれています。腸管におけるカルシウムの吸収、血液中でカルシウムを運搬するカルシウム結合タンパク(CBP)の合成、腎臓におけるカルシウム再吸収の促進など、カルシウム・リン代謝に欠かせない脂溶性ビタミン(脂質に溶けるビタミン)がビタミンDです。

ただし、ビタミンDの働きは、カルシウム代謝の調整にとどまりません。数十年間の医学の進歩により、骨だけでなくほぼ全身のさまざまな領域で欠かすことのできない重要な働きをしていることがわかってきたのです。

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