17世紀の病気が日本で流行りだした理由

子どものビタミンDレベルが低下していることを示唆する事象も現れ、警鐘が鳴らされています。

頭蓋癆ずがいろう(頭蓋骨の石灰化が不十分で軟らかいため、容易にへこむ状態)」が増えており、2008年に京都大学発達小児科学の依藤亨先生が「日本の新生児に潜在性のビタミンD欠乏症が非常に多く、特に母乳栄養児ではビタミンD欠乏の改善が遅れる」と指摘されました。

頭蓋癆は「くる病」という、骨が曲がって折れやすくなってしまう病気の初発症状として現れることが多く、これはビタミンD不足によって起こります。くる病は17世紀のイギリスで初めて報告され、のちに原因・治療法も明らかとなり過去の病気と思われていましたが、図表4のように、2014年までの10年間で2.5倍も小児の患者数が増えているということが、赤坂ファミリークリニック院長の伊藤明子先生によって報告されました。

3割以上の乳児が「ビタミンD不足」に陥っている

また、2017年の順天堂大学小児科の中野聡先生らの報告によれば、国内における乳幼児のビタミンDの体内蓄積状況を調査したところ、生後半年までの乳児の3割以上が「欠乏状態」、約半数が「不足状態」にあるということでした。

しかも、驚くべきことに、母乳栄養が中心の乳児では約半数が「欠乏状態」、約25%が「不足状態」と血中ビタミンD濃度が極端に低かったのです。

母乳栄養群(28例)と、調整乳(牛乳や豆乳に糖質・ビタミン・ミネラルなどを添加したもの)を使用する調整/混合栄養群(21例)に分けて、血清25(OH)D3値を解析したものが図表5です。母乳栄養群では、調整/混合栄養群に比べて明らかに血中ビタミンD濃度が低く、20ng/mlより低い「欠乏状態」にある乳児が多かったことがわかりました。