使い込むだけ音色が変わるヴァイオリン

【三宅】楽器といってもいろいろありますが、ヴァイオリンの魅力とはどのようなものなのでしょう。

【宮本】いっぱいあります。ひとつは、同じような形、材質、サイズであっても、それぞれの楽器に個性があることだと思います。たとえば、私がいまお借りしている楽器は300年ほど前に作られたもので、人から人へと渡ってヴァイオリンがいろんな経験をしてきたからこそ出せる、音の味わいや深さというものがあります。

撮影=原貴彦
イーオン社長の三宅義和氏

【三宅】古い楽器は衰えていくのではなく、さらに良くなっていくと。

【宮本】そうですね。また、ヴァイオリンはピアノなどと違って、音をとぎらせることなくずっとつなげることができます。そこを自由自在に操ることができるのも、魅力の1つだと思います。

【三宅】なるほど。好きなヴァイオリニストはいらっしゃいますか?

【宮本】曲によって違うのですけれど、小さい頃から憧れの存在だったのは、やはり五嶋みどりさん。マキシム・ヴェンゲーロフさんも情熱的な演奏をされる方で憧れていました。あとはヤッシャ・ハイフェッツさんやクリスチャン・フェラスさん……。挙げたらキリがありませんね。

なぜ、音楽家は外国語の習得が早いのか

【三宅】中学時代はドイツで過ごされたそうですね。現地ではインターナショナルスクールに行かれたそうですが、授業は英語ですよね。それまで英語の勉強はされていたのですか?

【宮本】いえ。中学1年生の一学期だけ日本の学校で過ごしたのですけれど、そこで習った英語だけです。自分の名前を書くことすら怪しい状態でしたので、最初はかなり戸惑いました。

【三宅】家庭教師をつけたりして勉強したのですか。

【宮本】とくにはつけていません。学校にいるときはESL(English as a Second Languageの略。英語が母国語でない学生のために設けられた英語プログラム)という、英語が苦手な子どもたちのためのクラスがあったので、しばらくはそこで勉強していました。自主的な勉強としては、毎朝必ず『BBC』や『CNN』のニュースを観るようにしていました。とにかく耳を慣らすことが大事だと先生にも言われていたので。

【三宅】そうしているうちに、少しずつクラスメイトとの会話もできるようになったわけですね。

【宮本】はい。でも最初は本当に探り探りで、お互い「さて、どうやってコミュニケーションをとろうか」みたいな感じでしたけど、そうやってコミュニケーションを積み重ねているうちに自然と話せるようになっていました。

【三宅】「音楽をやっていらっしゃる方は、外国語の習得が早い」とよく言われますが、どう思われますか?

【宮本】海外留学した音楽仲間を見ていても、それはたしかにあると思います。やはり耳が発達しているからリスニングの上達が早いということもありますし、あと、自分の発する音に敏感ということもあるので、正しい発音に近づこうと自然と意識が向くのかもしれません。