「孤独な人」がハマるわけではない
なお、よく言われがちな、『(ネットの普及や核家族化の進展、地域社会の衰退などによって人間関係が希薄化した結果)孤独な人が、占い・スピリチュアルに話し相手を求めて利用する』という仮説は正しくない。
拙著で恐縮だが、『スピリチュアル市場の研究』の調査結果によると、「孤独を感じる」「自分の将来に不安を感じる」などに関して、占い・スピリチュアルの利用経験がある人と無い人において統計的に有意な差異は見られなかった。
一方で、占い・スピリチュアルの利用経験が無い人と比べて、ある人がない人より有意に高かった項目は、「テレビや雑誌の健康情報があればチェックする」「人の話を信じやすい」など信じやすさ、従順さや、「人に気に入られたい、評価されたい」「人の目が気になる」といった自信のなさ、自意識の高さなどであった。
さて、上記で挙げたライフイベントなどによって、占い・スピリチュアルを利用する動機が発生したとして、なぜ占い・スピリチュアルを選ぶのか。友人に相談したり、他の娯楽やエンタメサービスでもいいはずだ。
前述の調査結果にもあったように、占い・スピリチュアルの利用に最も相関が高かったのは「信じやすい」ことであった。つまり、利用するどうかを決める最大の要因は、運勢や直感、高次元の存在など“目に見えないもの”を信じられるかどうか、である。
占いやスピリチュアルは、“目に見えない力”のおかげで、友人やAIからは得られない、常識を超えた素晴らしい解決方法が見つかるかもしれないという期待感を抱かせる。これが最大の魅力と強みだ。
「他力」から「自力」へ
以前の占いやスピリチュアルでは、天使や宇宙意識など高次元の存在たちに(場合によっては占い師やヒーラーに)「どうしたらいいのか教えてもらう、幸せにしてもらう」というのが主流であった。言い換えると、人間は、それらの存在よりも無力で助けが必要な存在と認識されていたということだ。
ところが、昨今では、上記のような「他力・依存型」サービスは残りながらも、自分こそが素晴らしい存在であり、自身を幸せにできるという考え方のコンテンツやサービスが急増している。
その内容は、天使や宇宙意識などは、変わらず重要な要素として登場するものの、それらの存在はあくまで助言するだけ。その考えを採用するか、いかに日々実践するかなどを決めて行動する主体は自分自身であり、それなくしては何も変わらない、というもの。以前からもそのような考えはあったが、今よりは格段に少なかった。
受け身から自力への明らかな転換点は不明だが、「引き寄せ」が広まり出したころから徐々に加速していった印象がある。そして、最近、急増中のキーワードは「ノンデュアリティ(非二元性)」「量子力学」である。
なお、「ノンデュアリティ(非二元性)」とは、諸説あるが、目に見える現実世界は自分自身が作り出した幻想であり、実は自分も他人もとりまく世界も無い、観察する対象もされる対象も分かれておらず1つである、という考え方。釈迦の考えに近いとも言われる。