※本稿は、池田渓『東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
テレビがこぞって取り上げる「東大生」
「東大なんかに入るもんじゃないよね」
チャーハンを頰張りながら、僕と同じ東大卒の友人が言った。僕はといえば、口に入れた餃子が思ったよりも熱かったため、慌ててビールで口のなかを冷やしているところだった。
もとよりこちらの返事を期待していたわけではなかったのか、彼は独り言のように「こいつらバカだよね、東大なんかに入って」と続けた。
東京大学の本郷キャンパスからほど近い場所にある中華居酒屋・福錦。その天井近くに備え付けられた大型テレビの画面には、東大生を主役にしたバラエティー番組が映し出されていた。
どうやら友人はこれを眺めていたらしい。店から歩いて行ける距離にある「赤門」がVTRで流れ、スタジオのひな壇に並べられた若い東大生たちが明石家さんまにいじられて苦笑いをしている――。
テレビでは、東大と東大生を面白おかしく演出した番組がいくつも放送されている。それはトーク番組だったりクイズ番組だったりしたが、テレビをほとんど見ない僕がその存在を知るほどに、どの番組も高い視聴率をたたき出し、世間では話題となっていた。出演している現役東大生が半ばタレント化し、本を書いたり講演をしたりして、それがまた人気を博しているという話も聞いた。
「東大に行けば幸せになれる」と信じられている
僕は書籍ライターの仕事をしているが、あるとき編集者との雑談のなかで「昨日の『東大王』見ました?」なんて話題が出た。
見ていないと答えると、「売れる本を書くためには、ああいう今ヒットしているテレビも見ておかないといけないんじゃないですか?」とチクリと刺され、とっさに十くらいの反論が頭に浮かんだけれど、いつものように「そうですね」と返すにとどめるということがあった。
世間で語られる東大のイメージの多くはポジティブなものだ。
「東大は日本の『知』の最高峰」
「東大生は頭がいい」
「コンプレックスとは無縁の最強の学歴」
「みんな一流企業に就職する」etc.
そして、それらのイメージによって、総じて一般家庭では「東大に入れば人生の幸福が約束される」と思われている。