「裏の東大本」を書くことにした

自身が経験し、また、間近で見聞きをしてきたことだから、僕たちにとっては分かり切ったことだけれど、世間の認識はそうじゃないんだよな――改めてそこまで考えたとき、東大をやたらともてはやすテレビや本とは別の角度で東大について書いてみようという気になった。

東大に対して漠然とした憧れを抱いている人たちに、「本当はそうじゃないんだよ」と伝えたい。居酒屋でたまたま目にしたテレビが図らずも本書の執筆の動機となったわけで、やはり編集者の言った「テレビを見ておかないといけないんじゃないですか?」という苦言は正しかったのだ。

「東大受験攻略本」「東大子育て本」「東大式勉強法」「東大ノート術」「東大読書術」「東大文章術」「東大式投資法」……東大をポジティブにテーマに組み込んだ本は数多くあるけれど、この本は、それらとは別の角度から東大について書いたものだ。東大と東大生、東大卒業生の表には決して出てこないネガティブなエピソード集――「裏の東大本」とでも言おうか。

東大に入ったがゆえの「生きづらさ」

本を書くにあたって取材をはじめてみると、材料は簡単に集まった。「話はしてもいいけれど、本に書くのは勘弁してほしい」と言われることもあったが、そのようなケースを除いてもエピソードには事欠かず、少々胸やけがするほどだった。

池田渓『東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話』(飛鳥新社)
池田渓『東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話』(飛鳥新社)

やはり多くの東大卒の人間が、東大に入ったがゆえの「生きづらさ」を感じていた。じっと耐えている人もいたし、そこから逃れようとしている人もいれば、うまく逃れた人もいた。そして、逃げる前に「壊れた」人もいた。

本書は僕自身の経験も含めて、東大の卒業生たちから聞いた話を、随時補足を入れながら淡々とつづったものだ。実際、東大に通っていたことのある人なら、この類いの話はごく身近で起きていたこととして納得できるだろう。

冒頭の友人との会話は、こんな言葉で締めくくられた。

「東大に入ってもキツいばっかりやで」
「まぁね。入る前に知っておきたかったよね」

東大合格を目指して勉強に励んでいるあなた、自分の子どもはなんとしても東大に入れたいと思っているあなた、身のまわりにいる東大卒の人間のことをもっとよく知りたいと思っているあなた、東大を出たのに落ちぶれた連中を見てスカッとしたいあなた、そして、日々に生きづらさを感じている東大卒のあなた――この本が、そんなあなたの役に立ちますように。

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