“ベター”より“ベスト”を求める
占いやスピリチュアル業界も、ファッションなどと同様、新しいテーマや流行を次々と打ち出すことで消費を喚起する側面がある。
まじめで骨太な「精神世界」が、『オーラの泉』をはじめとするTV番組の登場で、ファッショナブルで親しみやすい「スピリチュアル」にイメージ・チェンジしてから15年以上が過ぎたいま、その頃にこの世界に入った人が、よりディープで本格的なアイデアを求めて放浪している可能性もある。
というのは、皆が最初から「他力より自力」を目指すわけではない。占いやスピリチュアルが好きな人は、自分の直感よりも透視力の高い「先生」を信じてしまう傾向がある上、他人から一気に変えてもらう方が楽であり、日々、自分に向き合うのことは面倒なようなのだ。
そこで、当初は他力だったものの、期待した効果が得られずに、やはり自分でやらないといけないのか、と原点に戻るセルフでの開運は、単なる流行の変化ではなく、上級者向けの進化系という側面もある。より短期で見ても、占い・スピリチュアルは、化粧品や健康食品と同様、“今のものはベターであってベストでない”ことから、日々、より『効果』の高いものを探し続ける人は多い。
こうして「占い」は広まっていく
10年前に拙著を記した当時、TVというマスメディアがまだまだ圧倒的な存在感を持ち、ネット(ソーシャルメディア)による個人の情報発信は、いまほど気軽なものではなかった。
著名な占い師などがレギュラー番組を持ち、マスメディアが需要を喚起することで、関連書籍やパワーストーンなど関連グッズが売れ、占いサイトやヒーリングセミナーなどにも客が付いていく、いわば噴水型ともいうべき構造となっていた。
それが、昨今では、ネットという強力なツールを得て、これまでは情報やサービスの受け手に回っていた個人が、顧客であると同時に、その知識を自ら発信して、再生産する流れができた。
そうなると、情報の発信量が急激に増えるとともに、ますます情報発信のハードルが低くなるという相乗効果が循環的に生じ、前述の素人以上プロ未満の占い師・ヒーラーが大量に現れることになった。
占いから「引き寄せ」へ、他力から自力へ、外側の出来事から自分の内面へ、無料から有料へ、利用側から提供側へ、さまざまな段階とバリエーションを拡大しながら、より幅広い消費者を獲得していく傾向は今後も続くと思われる。