誰でも占い師になれる時代

ネットを介したシェアエコノミーにおいても、占い・スピリチュアルは存在感を増している。

個人が得意なスキルを匿名でサイト上で売り買いできるマッチングサービス“ココナラ”でも、占い・スピリチュアルは柱の1つに成長している。ココナラでは、1分100円からの電話占いや1件1000円のヒーリングなど利用しやすい価格帯が設定されており、購入者側は気軽に体験できる。

開業間もない占い師やヒーラーにとっても、経験を積むために登録したり、サイト開設や集客など面倒なことはせず手軽に小遣い稼ぎができる受け皿になっている。副業解禁の流れにより、サラリーマンが副収入を得るために参入しているケースもあるだろう。実際に、ネット上では、サラリーマンの副業として占いを勧めたり、具体的な方法を紹介するサイトは多く、中には、月に10万円以上稼いでいる、とSNSで発信する人たちもいる。

ネットによって、個人が無料で情報発信できるプラットフォームが提供されたことで、素人以上プロ未満の友達感覚の占いという新市場が発掘される一方、無料コンテンツ経由で、占いやスピリチュアルに縁の薄かった新たな顧客層が開拓されつつある。見方によっては、個人による無料や安価なコンテンツに顧客が流れているともいえる。

いまや、うらぶれた雑居ビルの非日常感満載の空間でオーラの漂う占い師が説教するというよりも、友人同士でお勧めの恋愛コンテンツをシェアしあう光景の方が一般的となってきている。

人生に対する「モヤモヤ」が占いの入り口

誰もが幸せを感じたい。しかし、人生には、恋愛・結婚・離婚、進学、就職・転職、生老病死などのライフイベントがあり、その度に大きな選択を迫られる。いくら合理的に考えても、どうしても不確定なことや納得できない部分が残る。これまで通りの通常のやり方では現状を変えられそうにない、不可解な事象に意味づけを与えることで脳の負担を減らしたい……。

そこで、見えない世界の力を借りて、予測や対策を知ることで、正解を選びたい(失敗や無駄な回り道をしたくない)、目に見えない特別な力のサポートで楽にミラクルを起こしたい、と占い・スピリチュアルへの根本的なニーズが発生する。

直近では具体的な問題はなくても、暇つぶしで占いサイトをのぞいたり、神秘的な世界観が好きでハマるといったケースでは、過去のさまざまな経験から、上記のようなニーズが言語化されずに「このままでいいのかな」「何か充実感がない、楽しくないな」くらいのモヤモヤとして、通奏低音のように響き続けているからこそ利用するのだろう。