ローカルお菓子を中心に扱う「Bokksu」
そしてもう1社、「Bokksu」は箱の中身も生い立ちもTokyoTreatとは対照的だ。日本語のボックスをそのままローマ字で綴ったネーミングのBokksuを経営するのは、ニューヨーク生まれのアメリカ人ダニー・テイングさんだ。
スタンフォード大学卒業後グーグルに入社したが、1年で辞めて日本語を学ぶために来日、早稲田大学に4年間在籍後に楽天に入社し、日本全国を回るチャンスを得た。そこで知ったのが各地方に根をおろした質の高いお菓子や職人たちの存在だった。
その後アメリカに戻ってからも日本のお菓子が忘れられないダニーさんは、2016年Bokksuを立ち上げたのだ。
TokyoTreatより後発のBokksuにとって全国の中小メーカーや職人によるお菓子は差別化の武器となった。最大の人気商品は、長野のメーカーが作ったイチゴにホワイトチョコレートを染み込ませた「ホワイトストロベリー」。こうした大量生産でないお菓子にこだわるからBokksuの値段は他より高く、年齢層も25~44歳の大人が中心だ。ニッチとはいえ現在は世界70カ国に2万人の購入者がいる。
ダニーさんは日本の地方のお菓子メーカーと世界の消費者をつなぐことで、中小企業をサポートしていきたいと胸を張る。
一見対照的に見える2つのボックス・サブスクだが、お菓子を通じて世界の人をつなげ豊かな未来を創っていきたいという思いが共通して感じられる。
アメリカにはない「季節感」が魅力
そもそも、なぜアメリカで日本のお菓子が注目されているのだろうか?
アニメをはじめとしたポップカルチャー、寿司やラーメンなどの日本食の人気はやがてスナックにも波及し、「NYで大ブレイク中「たい焼き」の大進化をご存じか?」(1月30日)でもその様子を紹介した。特にスナック菓子に関してはアニメに登場する率が高いため、ポッキーやハイチュウなどその影響で知られるようになったものも少なくない。
前出のメアリーは「日本のスナックはとにかくおいしい、特にアメリカにはない繊細で微妙な味わいがあります。例えばプリッツの野菜コンソメの味」。なるほど、アメリカ人が日本の料理のおいしさを例える時によく使うUMAMI(ウマミ)が、スナックにも反映されているというわけだ。
また、甘いお菓子もアメリカのようにハッキリと強烈な甘さとは違うという。
しかし味だけではない。TokyoTreat、Bokksuのオーナーは日本のお菓子にしかない魅力の一つに「季節感」を挙げる。Bokksuのダニーさんはこう語る。
「日本には旬という言葉があるが、英語にはそういう意味の単語さえない。春にはいちご、桜などのフレーバーのスナックが出回る日本とは対照的に、アメリカのお菓子、例えばスニッカーズは50年間全く変わらない味です」
確かにイギリスが元祖のお菓子キットカットも、日本ではこれほどのバラエティがあるのに、頑固にオリジナルの味を守り続けている。