強く美しい女性を演出する中国メイク

いまご紹介したチャレンジメイクは、非日常のものとして10代を中心にSNS上で楽しまれた。しかし今後、SNSの枠を超えてリアルでも広がりそうなメイクもある。涙メイクに象徴される中国メイクだ。

チャイボーグメイク

「中国の美人インフルエンサーは、サイボーグ級に美しいという意味で“チャイボーグ”と呼ばれます。チャイボーグたちがしているのが中国メイクです。特徴は、強い女のイメージ。日本のメイクは控えめでナチュラル。また、韓国メイクはピンクがメインカラーで、かわいらしさを演出するのにぴったりでした。それに対して、中国メイクは、はっきりとした色使いをします。たとえば韓国メイクだとアイラインは茶色で自然に見せていましたが、中国メイクは黒いアイライナーで、太くくっきりと書きます。リップも真っ赤で、かなり派手です」

日本で中国メイクに注目が集まり始めたのは、2019年夏ごろから。「鹿の間の穂乃香」など複数の美容系YouTuberが取り上げて、じわじわと浸透してきた。中国メイクの広がりに伴い、中国のコスメブランドも売れている。涙マスカラの「ZEESEA」は、海外コスメを豊富に取り扱う通販サイト「Qoo10」でも人気ブランドになっている。

「韓国コスメが好きな女の子たちは、韓国に旅行してお土産でコスメを買ってくるコト消費も楽しんでいました。しかし、コロナで旅行に行けなくなり、通販サイトに流れた。そこで中国コスメに出合い、挑戦してみようと考えた子が増えたのではないか」

アジア全域に“チャイボーグ”が溢れる日

中国に経済で抜かれても、ファッションではまだまだという見方は古い。

「『ZEESEA』の本社があるのは中国の杭州。アリババの本社もあり、中国では富裕層の街として知られています。もともとのその層をターゲットとしていたのか、パッケージは洗練されていておしゃれです。また、男性に比べて女性の消費活動は政治な立場に影響を受けづらい。中国だからと先入観を持たず、素直にチャイボーグに憧れて購買していると考えられます」
「中国メイクがこれから爆発的に広がるかどうかは、まだわかりません。ただ、『ナチュラル』『可愛い』しかなかった最近のメイクに、『強い女』という新しい選択肢が加わったことはたしか。いままでのメイクに物足りなさを感じていた子たちが、SNS上だけでなくリアルでも中国メイクを楽しむようになるのは時間の問題でしょう」

かつて韓国メイクやタイメイクがアジア全域を席巻したように、すでにアジアのコスメ市場はつながっている。日本を含めアジアのいたるところでチャイボーグ風の美女が見られる日は、そう遠くないのかもしれない。

(聞き手・構成=村上 敬)
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