オンワードホールディングスは、7月13日、「ZOZOTOWNへ再出店する」と発表した。ブランド撤退からわずか1年半で、なぜ復帰することになったのか。流通・ファッションビジネスコンサルタントの小島健輔氏は「百貨店依存への危機感の表れだ。だが、両社の思惑は微妙にすれ違っている」と指摘する――。
オンワードホールディングス オンワード樫山 本社
写真=アフロ
オンワードホールディングス オンワード樫山 本社=2020年1月10日

身長・体重を入れるだけでセットアップが注文できる

オンワードホールディングス(HD)は、7月13日、ZOZOとの提携開始を発表した。その骨子は、ZOZOが蓄積したサイズデータ「マルチサイズ」に基づき、身長と体重を選択するだけで、スマートテーラー事業「KASHIYAMA(カシヤマ)」のスーツなどをオンラインで簡単に注文できるというものだ。

オンワードは8月下旬からサービスを始め、5年後までに100億円規模の売り上げを目指すとしている。ただ、商品の企画、生産は、すべてオンワードによるもので、それらはすでに「KASHIYAMA」として展開されているため、それほど新味がある発表ではない。

ZOZOが提供するのはサイズマッチングのITサービスと会員顧客、受注と決済、発送だ。完成品は中国・大連のオンワード自社工場から一着毎のパックランナー(運賃を抑え、型崩れを防ぐ独自の圧縮パック)でZOZOの倉庫に届き、顧客に宅配出荷される。

デジタル化された大連の自社工場でスピード生産される「KASHIYAMA」のパターンオーダーは採寸から1週間で顧客に届く。ZOZOとの取り組みではZOZOの倉庫を経由するため10日~2週間と、やや時間がかかる。EC業界で言う「ドロップシッピング」(販売者があらかじめ商品をモール事業者の倉庫に預けず、受注してから倉庫に届ける)というスタイルだ。

なお似たようなマルチサイズ選択型パターンオーダーサービスを展開するユニクロの「ジャストサイズ」は“擬似”パターンオーダーで、全サイズのミニマムストックを出荷倉庫に積んでいるから、欠品しない限り注文の翌日か翌々日には届く。

ZOZOの倉庫は経由するものの、倉庫に在庫を預かって注文に応じて出荷するわけではなく、在庫を預かるフルサービスを売ってきたZOZOとしては異例な取り組みだ。オンワードに復帰してもらいたいZOZOと顧客を広げたいパーソナルスタイルが折れ合った取り組みで、遠からず次のステップへ進むと思われる。