ZOZO側の発表に見る「すれ違い」

セレクトショップ集積からブランドが広がった「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」はファッション好きの20~30代イメージが強く(今年1~3月間の会員平均年齢は男性31.6歳、女性33.9歳)、Zホールディングス傘下となってPayPayモールにも出店し、保守的な百貨店客も含めて幅広い世代を取り込みたいZOZOにとってオンワードの復帰は不可欠だった。閉店ラッシュにコロナ休業も加わって百貨店客がECに流れ込む中、オンワードが再出店すれば他の百貨店アパレルもそろい、百貨店客を取り込めるという思惑もあったに違いない。

ZOZO側の発表ではオンワードの「J.PRESS」や「Paul Smith Woman」など11ブランド・13ショップの「ZOZOTOWN」再出店の方が大きくフォーカスされていたから、両社の思惑は微妙にすれ違って見えた。

衰退を食い止めるため、百貨店からECへ

オンワードはコロナ以前から「百貨店からEC」という引き返せないルビコンを渡っていた。非効率な運営で商品が割高になり若者も大衆も離れていく百貨店に依存していてはオンワードも衰退するばかりだから、00年代にはショッピングセンター(SC)や駅ビルなど商業施設に店を広げた。さらに元経産省キャリアの保元道宣氏がオンワードHDの代表取締役に就任した15年以降は着々とデジタル化への布石を進め、18年3月には支店営業軸からEC軸へ営業組織も物流体制も一変させた。そのうえで2019年10月には全国約600カ所の店舗を閉鎖すると発表した。

EC売り上げは17年(2月期、以下同)の150億2100万円から18年は36.8%増の202億6900万円、19年は25.8%増の255億円、20年は30.6%増の333億800万円と順調に伸び、売り上げに占めるEC比率もグループ全体で6.1%から13.4%へ、オンワード樫山単体では9.9%から16.8%まで伸び、ほぼ目論見もくろみ通りに進んでいたところにコロナ危機が襲った。

コロナ危機が直撃した20年第1四半期(3~5月)は売上高が前年同期より34.9%も落ち込んで21億1200万円の営業損失、24億1700万円の純損失を計上し、純資産は19年2月期末から127億8700万円も減少するというダメージを受けたが、その窮状を力強く支えたのがECだった。