いまこそ日本人に「商売と道徳」の両立を
【田中】プロテスタントが多いことと関係あるのかもしれませんが、アメリカという国はアクセルが行きすぎると必ずブレーキをかけるんです。株価重視が高まりすぎて粉飾決算が多発し、2001年にエンロンの経営破綻が起きました。この破綻をきっかけに、行きすぎた資本主義の暴走を止めるために内部統制というブレーキができたのです。
その数年後、日本にも内部統制がやってきたのですが、ちょうど日本はITバブルが弾けて経済が瀕死の状態だった。そこに内部統制というブレーキを踏んでしまったことで企業業績がさらに悪化しました。ここは本来アクセルを踏むべきだったところに、グローバルスタンダードだからという理由でブレーキを踏んでしまった。意味のない過剰管理のブレーキで動きが止まってしまいました。
当のアメリカは、2008年にリーマン・ショックが起きたときに、内部統制を弱めている。彼らはアクセルとブレーキのバランスをしっかり理解しているんです。行きすぎたときはブレーキをかけ、速度が弱まってきたらアクセルを踏む。日本の場合、時速30キロメートルしか出ていないのにブレーキをギュッとかけてしまう。渋沢栄一の言う商売と道徳の「両立」の意味をいまいちど考え直すべきだと思います。