トランプ大統領は1分間に約10回も「OKサイン」を出す
さて、某テレビ局の依頼でトランプさんの演説を計測していた私は驚きました。彼は大統領就任演説の16分30秒の中で、指を丸くしたOKサインを112回もしていたのです。1分間に約10回です。
親指と人差し指で輪を作るのですが、最初こそ「crime」「drug」などの強調したい言葉のところでしていたものの、だんだん調子が乗ってくると、ほぼ自動操縦(オートマトン)のようにこの動作を出しました。彼の絶好調のときの手の動作の特徴です。
このOKサインのような手の動作は、オンライン会議の中でも画面の中でその手を顔のすぐ横や顔の前に持ってくることで十分伝えることができます。バストアップでも手の動きは十分入れられます。
手を広げて、こちらへどうぞと手招きしたり、話を聞いてもらって上手く終わったとき、画面の中でパチパチと手のひらを合わせて拍手の動作を送ることもできます。バストアップの身体動作でも、キネシクスはきちんと計算して使いましょう。
対面のときは全身が使えますから、そのときはまたキネシクスの計算を、面積を大きくしてすることが必要です。
会話中の1分間のうち32秒以上相手を見つめる
「しっかり相手の目を見て話しなさい」と対面で言うと、ガッと目を開いた受講生が、「それで1分間のうち何秒ですか」と聞き返してきます。私が行った100人の社会人を対象とした実験では、「1分間のうち32秒以上のアイコンタクト」が、二者間の対話で相手が十分見てくれていると回答者たちが報告した数字です。
対話中の1分間あたり32秒の目線はオンラインでも必要です。キョロキョロして、「どこの資料だったっけ」とやらないで、ペーパーから目を上げてフレームの中の相手の顔を見ること。オンラインの場合は実際には「カメラに向かって喋る」ことになります。メモを取るのもOKですが、ずっと手元を見ていると知らない間に顔がレンズから外れてしまうので、相手は聞いてくれているのか不安になってしまいます。カメラ目線で話しましょう。
大きい声よりも、強弱のある声が心に響く
どんなに大きい声を出しても、その大きな声のトーンを変えずに話し続けると、聞き手は居眠りしてしまいます。大騒音の中で育った子が、慣れてしまえば昼寝もできるのと同じです。
相手が関心を持つための声には、強弱が必要です。小さな声で囁くように話していたと思ったら、ガンと声のボリュームが上がって、そこが突出する。逆に強い調子で話しているところで、急に声のトーンを落とす。これを「プロミネンス」と言います。プロミネンスは「突出」という意味です。とがったところという意味です。音声の専門家たちはこれを「言葉を立てる」というふうに言います。
オンラインの中では淡々と言わずに、どこにプロミネンスを置くか、原稿でマーカーをつけておいてもいいし、そこだけ文字をでんと大きくしてもいいです。そのマーカーの言葉の直前で、ほんの一瞬のポーズを置きましょう。そして「タメ」を作って「バン」とプロミネンスをぶつける。そうするとメリハリが効いた印象になります。それが話を高い集中力を保って聞いてもらうコツです。