対面より0.8倍速で話すと聞き取りやすい

対面での会話で快適な文字数は、1分間あたり266文字、ひらがなと漢字が適当に交じっている平均的なケースです。ところが、オンラインになったとき、この同じスピードで話そうとすると、なかなか聞き手がついてきません。五感のうち視覚、聴覚しか使えないことで、理解度とインパクトが落ちがちだからです。そこで同じ文字数で喋られると、言葉の判断ができない場合があります。簡単に言えば、わかりにくいのです。

私たちは、相手の顔がよく見えれば、耳で聞き取れなくても、唇の形を読んで単語を判断したり、相手の全体の服装で信憑性を判断したりもできます。

ところが、オンラインでは画面の中だけなので、言葉の周辺にあって意味を補助するスキルが十分に使えないのです。したがって1分間あたりの文字数をやや減らしてゆっくり話す必要があります。これについては最近の私の実験データがあります。普段1分間あたり266文字で話している私の1分間のスピーチを240文字にする。つまり10%文字数を減らしてオンライン研修の参加者(被験者)に聞いてもらいました。これでも十分わかると好評でした。私は人様にスピーチや演説を教えている立場ですから、相当に普段の発音がクリアです。他の発表者と同じ内容のスピーチをしても、議事録を作るスクリプターの方々から「アヤコ先生の声はテープ起こしが楽です」と、よく言われます。

対面でも普段、発声・発音の訓練をしていない人は、さらに10%落として20%減らした文字数、つまり0.8倍速で話すことをお勧めします。

バストアップの「キネシクス」にすべて集約する

アメリカ大統領であるトランプさんはキネシクス(kinesics)の名人です。キネシクスは、パフォーマンス心理学の用語で「動作学」という意味です。「kinesics」の「kine」はラテン語の「動く」という意味から派生しました。具体的には止まっているときの姿勢「ポスチャー」と、動いているときの身体動作「ジェスチャー」から成り立っています。

姿勢がよいこと、動作にメリハリがあってわかりやすいことがキネシクスの名人の条件です。言葉や顔の表情がよくても猫背で手や腕がカチッと固まっていたら、その人の話から迫力(インパクト)が消えてしまいます。

反対に、内心の不安や自信のなさをキネシクスで逆転することもできます。私の仕事仲間が行った教育実習生の実験です。教育実習生数名について、生徒に印象を聞いたところ、一番良い印象だったのはA先生でした。理由は「A先生が堂々と胸を張って、ニコニコしていたから」ということでした。しかし、A先生は実は「不安でたまらず、ニコニコすることを心がけた」とのこと。笑顔と姿勢が内心の不安を逆転したのです。堂々と胸を張って、笑顔でいるという「キネシクス」は、その人を自信満々に見せます。