「ずらす」ことは生存戦略になる
【岩田】人と違うことに耐える、そして誰かが人と違うことをやっても許せる。この二つの姿勢を僕らが身につければ、コロナ対策にもなるし、日本社会のヘンな同調圧力から脱却できる契機になると思うんですね。
【内田】それはほんとうによくわかります。感染症対策として一番いいのは「ばらける」ことなんですよね。できるだけ「みんながしていること」はしない、というのがいい。これは、限られた環境世界のなかで複数の生物種が生き延びてゆくために、生態学的ニッチを「ずらす」という生存戦略と同じだと思うんです。生物は夜行性、昼行性、肉食、草食、樹上生活、地下生活……というふうにニッチを「ずらす」ことで空間的にも、資源的にも限られた環境のなかで共生している。感染症はそういう生き方が人間の場合でも生存戦略上有利であるということを教えてくれたんじゃないかと思います。岩田先生も僕も、「人と同じことをする」ことが大嫌いですけれど、そういう人って、たぶん感染症に強いんですよね。