早くも「菅政権」の誕生に向けた忖度が始まっている
結果として執行部は、若手たちの訴えに耳を貸さなかった。9月1日の党総務会は約2時間半にわたってこの問題を議論したが、執行部は原案通り「簡略版」で押し通した。都道県連の中には、党員を対象にした「予備投票」を行う方針の所もあるが、正規の党員投票と比べ、党員票部分の比率がはるかに低いことに変わりない。
異論が出ても安倍氏の意向を忖度して追認していく展開は「安倍1強」下では、よく見た光景だが、早くも菅政権の誕生に向けて執行部が忖度を始めているようなシーンだった。
かつて、党員投票をスキップして両院議員総会で新総裁を決めた例としては13年前の安倍氏の辞任の後、福田康夫氏が選ばれた時、そして翌年、麻生氏が選ばれた時などがある。偶然ではあるが、2人とも1年程度の短命政権に終わっている。
今回、正統性に疑問が投げかけられかねない新政権が国民にどう受け止められていくか。注視が必要だ。
党員投票を行うよう求めていた若手議員の代表格・小林史明青年局長は、総務会の決定の後、記者団に向け苦渋の表情で語った。
「党員投票の総裁選を行うには最低でも2カ月かかるという説明だった。むしろ問題は2カ月間かけなければ総裁選が行えない自民党の体質。私たちが次は力を取って、そして自民党を変えなきゃいけないという事を強く思います」