「東京問題」ではなく「神奈川問題」だ

「人口比で東京をはるかに上回る感染確認者が愛知、大阪、福岡、沖縄でも出ている。本当にこうしたことを、国会を開いて議論してもらいたい。今が最後のチャンスだ」

東京都医師会の尾崎治夫会長は7月30日、ただちに国会を召集し、新型コロナウイルス特別措置法などの改正を求めた。休業の要請はできても、それとセットになるべき「補償」に国は否定的で、それが自治体の手足を縛ってコロナ対策が進まなかったことを踏まえた至極当然の提言といえる。西村コロナ担当相は法改正も検討する旨を発言しているが、この「検討」はすでに春頃から自身が言っていたもので、数カ月たった現在まで何ら変わってはいない。そもそも国会が開かれていない状況で法改正はできず、10月以降まで臨時国会を開会すらしないという安倍政権の姿勢は専門家の提言を踏みにじるものだろう。

厚生労働省が発表している「新型コロナウイルス陽性者数とPCR検査実施人数」(1月15日~8月4日)によると、検査数は東京都が20万5452人と圧倒的に多く、陽性者数も1万4022人で全国最多になっているが、仮に東京と「同じ検査数」として各自治体の陽性者数を計算し直してみると、興味深い数字が現れる。「全国最多」となるのは神奈川県で、陽性者数は東京都の2倍以上となる3万100人に上る。実際にはPCR検査数が18776人とあまりに少なく、陽性者数も2752人と発表されているものの「単に検査数が少ないから感染が確認されないだけで、実態としては菅官房長官のおひざ元である神奈川県が全国ワーストかもしれない」(全国紙社会部記者)との声もあがる。

安倍の「コロナ狂騒曲」

菅官房長官は東京都の感染者数が多いことなどから「東京問題」と批判していたが、実は自らの地元である「神奈川問題」であるかもしれないというのでは笑うに笑えない。先の計算に基づくと、次いで陽性者数が多くなるのは8月6日に県独自の緊急事態宣言を出した愛知県で1万7400人、3番目は福岡県の1万7300人となる。首都圏は千葉県が1万2900人、埼玉県が7300人。関西圏は大阪府が1万2100人、京都府が9000人、兵庫県は9700人となった。北海道(9900人)や沖縄県(1万3600人)も高い数字が見られている。安倍総理や菅官房長官は緊急事態宣言の再発令には否定的だが、「Go Toトラベルキャンペーン」の影響が出ているとすれば、国民の失望はさらに大きなものになっていくだろう。

ある全国紙政治部記者はこう溜め息を吐く。「最近まで国の『無策批判』が相次いだため、政府高官は必死になって『ヒール役』を探していた。その結果、東京都の小池百合子都知事に矛先が向かい、政府高官のオフレコ発言をもとにメディアが小池氏を一斉批判する一方、安倍官邸には火の粉が飛んでこないように仕向けている。ただ、そんなことをしている国家の状況ではもはやなく、そういう姑息なところも国民から見透かされているということを認識すべきだろう」

国会議員は正当な選挙で国民から選ばれた国会における代表者であるが、その役割を十分に果たしているとは言い難い実態があるとはいえ、コロナ禍の今は直ちに選び直すことができない。だからこそ、国民は今回の「コロナ狂騒曲」をしっかりと脳裏に焼き付け、近い将来の選挙で大切な一票を投じる重い責任を忘れてはならない。

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