「Go Toトラベルキャンペーン」で専門家を無視
「東京都以外の実施は差し支えないという専門家の意見を聞いている」
菅官房長官は7月17日の記者会見で、同22日からの「Go Toトラベルキャンペーン」開始は問題ないとの認識を強調した。だが、前倒ししてまで強行したキャンペーンは菅官房長官の説明とは異なる舞台裏があったようだ。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は7月29日の衆議院国土交通委員会で、キャンペーン開始について「根拠を持った説明ができる必要があると思ったので、もう少し判断を延ばしたらどうですかというふうに申し上げたが、政府はそのことについては我々の提言は採用しないと」と説明し、専門家の意見が受け入れられなかったことを明らかにしている。「専門家の見解」を聞く前に、とにかく東京を除外してスタートするという結論ありきの「政治判断」が根拠というトンデモぶりだ。
専門家が懸念したようにコロナ感染者は増加の一途をたどっている。キャンペーンを開始した同22日は、1日あたりのコロナ感染者が4月11日の720人を上回り、過去最多を更新した。菅官房長官は、参加登録した宿泊事業者が7月28日時点で約1万800に上り、主なホテル・旅館の大半が登録したと説明し、「感染対策と両立させながら経済を段階的に再開する」と意義を強調するが、感染再拡大期に逆行するような愚策は「もはや人災といっても過言ではないレベル」(民放テレビ記者)といった厳しい声も聞こえてくる。
臨時国会も開かない、記者会見もしない
加えて、お盆シーズンの帰省についても直前まで政府内の迷走が続いた。西村康捻コロナ担当相は「(帰省は)一律に自粛を求めるものではない」と説明。しかし、分科会の尾身会長は同じ日の緊急会見で「帰省した場合、高齢者と接する機会や飲酒・飲食の機会も多くなることが考えられる」と指摘し、手指消毒やマスク着用など基本的な感染防止策を徹底する対応が難しいと判断される場合には「慎重に考慮してもらいたい」と提言した。
こうした迷走には「お盆や夏休み期間中に帰省するかは前もって計画を組み、新幹線や飛行機を予約している。ギリギリまでどっちなのか判断できない、説明しない政府は国民をバカにしているのか」(千葉県在住の30代男性経営者)といら立つ声も目立つ。安倍総理にいたっては「安全で安心な新しい旅のスタイルを普及・定着させていきたい」などと相変わらず訳の分からない「KY(=空気が読めない)」ぶりを発揮する始末だ。
失政を追及し、事態打開や修正を図っていくのが国会の役割のはずだが、安倍総理は早期の臨時国会開会に後ろ向きで「一国のリーダーがなぜ国会で国民に説明をしないのか。とにかく『嫌だ、嫌だ』ということだ」(立憲民主党の安住淳国会対策委員長)と仕事放棄状態は続く。北海道新聞は8月5日付で「臨時国会を開かない、閉会中審査に出ない、記者会見をしない」安倍総理の姿勢を批判し、「野党や記者からコロナ対応などに関する追及を回避する思惑が透ける」と指摘した。同6日に安倍総理は6月18日以来となる記者会見に臨んだが、短時間で会見を切り上げる姿勢は変わっておらず、もはや夏休み気分になっているのかとの疑問を持ってしまう。