確かに自分の能力を客観視できず、揚げ句の果てに「自分のプレゼンを理解してくれないお客が悪い」と言ってのけるような部下がいたら上司はお手上げだろう。そして「なんでこんな人材を採用したのだ」と人事部にクレームをつけてくるはずだ。それだけにウェブ面接でも、この設問でふるいにかけておく必要があるのだ。
一方、吉井氏は過去についての質問を中心に面接することを勧める。
「たとえば失敗したときに、どうやって這い上がってきたか、そのプロセスをきちんと分析して自分の記憶のなかに留めておける人は、しっかり自己認識ができています。つまり今後何をするにしても、折れずに克服する胆力が備わっているということです。『失敗したときの心境はどうだったか、なぜ自分にとってその失敗が大きな痛手になったか、どのように頑張って克服し、心が強くなったのか』ということを尋ねられたときの分析ができているのです。ところが表面を取り繕っていて口先だけが上手い人は、過去の質問をされるとフリーズしてしまいます」
そして、あまり耳慣れない「組織内位置認識」は、簡単に言うと序列意識のようなもの。この組織内位置認識が弱い人には、自分は賢いと勘違いしていたり、自社の批判や批評を繰り返したり、上司を上司として認めず指示を聞かないなど、とにかく厄介な態度や、勝手な考えをする人が多い。
また「スキルセット」が優秀で一見いい人材に思えても、組織内位置認識が弱いと、組織全体にはマイナスになる可能性が高い。過度な上司批判や自社批判などを繰り返して、周囲の人間のモチベーションを下げてしまうからだ。新卒の場合は、通っていた大学のいい点・悪い点という質問で、批判の割合を測るとわかりやすい。批判のほうが一方的に多ければ要注意だ。
「中途採用の場合は、転職理由を深掘りしていくのに尽きます。面接の攻略本を読んできて、最初は優等生的なことを述べますが『ということは?』『つまり?』と切り込んでいくと、次第にネタが尽きて自社批判になっていきます。そこで組織内位置認識の弱さが露呈するわけです。新卒の場合は『大学のいい点、悪い点を言ってください』や『地元のいい点、悪い点を言ってください』という質問を投げかけると本音が出てきます。所属してきた集団の批判の割合が多い人には気をつけろということです」(冨樫氏)
背景の様子も要チェック
これまでの対面の面接では、エントリーシートに沿って質問したが、20年は、最初の5分間は学生が緊張せず臨めるような雰囲気づくりを企業側が行う傾向が多かった。実はそのなかで、どこまで緊張を解きほぐすことができるかによって、応募者の柔軟性をチェックすることも可能になる。