価格に惑わされず長期分散投資すべし
これらの点を考えると、「金価格が下げるのを待って買いたい」とか、「将来いくらになるだろう」などといった予測は、ほとんど意味をなさなくなる。「押し目」を待って買いたいと考える投資家は多いだろうが、押し目が来るかどうかは誰にもわからない。
金投資の目的を正しく理解していれば、「資金と時間を分散し、ゆっくりと買い進めていくのがベスト」であることがわかるだろう。
これは、株式投資にもいえることである。なんでもそうだが、いちどきにすべてをつぎ込むのは正しい方法ではない。
投資の達人でもない限り、一般人であれば、やはり資金分散・時間分散が正しい投資方法であろう。そうすれば、結果として購入価格を平均値に寄せることができ、資産価格の上昇が資産増加につながるだろう。
継続して投資をすれば「よいこと」がある
金価格の歴史を振り返れば、1990年代後半に円建て金価格が1グラム=1000円を割り込んでいたとき、積み立て投資を継続していれば、今ごろ金資産は相応に増えているはずだ。また、リーマン・ショック時や今回のコロナショックなどの危機で金価格が下げた際に積み立て投資を継続していれば、やはり資産は増えていることになる。
継続して投資をしていれば、将来によいことがある典型的な例である。
現在の金市場を取り巻く環境を考慮すれば、金価格がバブルであると断じることはできない。むしろ、今後さらに上昇してもおかしくない材料が多いのが実態である。その理由は、拙著を読んでいただくのが近道である。
長期的には金価格1万ドルになっても驚きはない
将来の金価格を予測しても仕方がないのだが、数年後、数十年後の金価格を想定すれば、それこそ5000ドルや1万ドルといった想像もできない価格水準になっても私は驚かない。
たとえば、原油相場は1990年代まで長らく10ドル台で取引されていたが、2000年代に入ると急伸し始め、最終的には150ドル近くまで上昇している。新興国が台頭し、世界の石油需要が拡大したことで、一時的ではあるにしろ10年間で15倍に跳ね上がったのである。
また、ナスダック指数も今や1万ポイントを上回っている。2000年のハイテクバブル時には、5132ポイントに達し、まさにバブル化したが、その後はバブル崩壊で暴落し、1108ポイントまで下げた。当時は、「二度と5000ポイントを超えることはない」といわれていたが、いまや20年間で安値から10倍の水準に達している。
一方、金価格もつい15年前までは、500ドル以下の水準での取引が常態化していた。それが今になってようやく4倍になったにすぎない。今後も上昇が続き、5000ドルや、2015年の安値水準から10倍に相当する1万ドルになっても驚いてはいけないだろう。