無職へのカウントダウンは迫る
50歳手前で新しい業界で働き出したが、周りに圧倒された。学歴をはじめ、本当に能力の高い人たちの中で働いていくことになった。その中で自分の強みで勝負していくしかないと必死になった。
「これまで培ってきた流通関係の人脈とのコミュニケーションを強みにしました。しかし上司にとってこれは数値化できないもので、評価されなかった」
その上司いわく、前任者も似たような悩みで辞めてしまったそうだ。それをわかって入社し、改善しようと提案したが、会社のシステム上、無理だった。1年ほど勤めたが、会社と話し合い、お互い次の道へ進んだほうがいいと判断した。
50歳で5度目の転職活動が始まった。働いた業界の属性が上がったおかげで、驚くほどオファーの数と質が前回の転職に比べて上がった。象徴的な出来事としては30代の時に勤めた会社からエクゼクティブクラスのオファーがあったという。しかし昨今のコロナ禍の影響ですべてのオファーが止まってしまい、無職へのカウントダウンが迫っている。
「厳しい転職とわかってはいましたが、自分の狙い通りの流れになっていたのです。コロナ禍さえなければ……。でも冷静です。前回の転職期間がつら過ぎたので、それに比べれば」
転職できないのはコロナ禍のせいだけではない
一見すると、氷愛さんが路頭に迷っているのはコロナ禍の影響がすべてであり、本人もそう思っているようだ。しかし、外資系に詳しい転職エージェントに50代の管理職クラスの転職について見解を尋ねると、「それだけが原因ではない気もします」と話す。
「コロナ禍の影響で転職業界はどん底です。今が底なのかもわからないほど、先が読めません。仕事が安定しているのであれば、今は極力動かないことをお勧めします。氷愛さんの場合、一度下げた条件を上げることは大変なので、条件をむやみに下げないことはとても大切です。しかし、条件が合わずに転職活動期間が長くなるほど、企業にとっては印象が悪くなる。転職に成功しても、業務内容が“ブラック“になる可能性が高い。もともと枠自体が少なく、能力の高い人ですぐに埋まってしまいます。若くて能力のある人材が求められるため、50代で外資系管理職クラスなるとハードルが一層上がります。それに加え、コロナ禍でどうしようもないといったところでしょうか」
次は経営者を目指すのが、氷愛さんのような管理職クラスが長く生き残る道。「60歳くらいまでは会社で働きたい。さらに副業としてコンサル業での起業をし、メインの収入源が会社の給料から不動産、コンサル業になれば理想です」と話すが、無職へのカウントダウンは刻一刻と近づいている。転職難民となった50代外資系管理職の戦いはまだまだ続きそうだ。