シングル1泊1室2500円でも経営できた理由

「アパホテル&リゾート〈両国駅タワー〉」(東京都墨田区)は新築オープン前の受け入れでした。

周辺住民の方からは、最初は反対の意見もありました。当時はまだコロナウイルスについて今よりもわかっていないことが多く、「空気感染をするのではないか」と20~30メートル離れた住民の方から不安の声をいただくこともありました。そこで、東京都に資料を作ってもらって、コロナウイルスの感染経路が主に接触感染と飛沫感染であることや、患者さんの入所は専用の車で行うので接触の心配はないことを周知したのです。

周辺住民を説得するために、建設を担当した当社の一級建築士が直接出向いて説明したりもしましたね。そうしたら受け入れ開始日に、周辺住民の方の1人が「コロナ患者さんが早く回復するように」と千羽鶴をくださったのです。「アパホテル〈大阪肥後橋駅前〉」(大阪市西区)の受け入れのときも千羽鶴をいただきました。周辺住民の方々にも私たちの想いを理解していただけて、ほっと胸をなでおろしました。

「コロナ患者さんが早く回復するように」と周辺住民からもらった千羽鶴。

従業員を感染から守るために、気を付けるべきことは徹底しました。自衛隊の方々に感染対策を指導していただいたりもしました。レッドゾーンとグリーンゾーンのゾーニング、防護服の正しい着脱方法などを教えていただいたのですが、彼らはプロ。おかげさまで従業員からはコロナウイルス感染者は出ませんでした。

コロナウイルス感染者の受け入れに加えて、このコロナ禍でもう1つ新しいことを行いました。「新型コロナウイルスに負けるなキャンペーン」です。これは、テレワークでの利用や長時間通勤による感染リスク軽減のため、アパ直(アパホテル公式サイト・アパアプリ)から予約することで、シングル1泊1室2500円(税サ込)~の特別料金でご宿泊いただけるプランです。感染者受け入れと同様、このコロナ禍で私たちができることは何かと考えた末の方針です。

それまで1泊1室の相場は1万円程度だったので、30~50代の出張族サラリーマンの方々の利用が多数でした。しかし、2500円という格安プランを出したことで、20代の若い層の利用も増えてきたのです。

このプランではアパ直からでないと予約できないようにしました。というのも、代理店を通すと2500円という低価格はとても実現できないからです。アパホテル会員数はこのキャンペーンが起爆剤となり開始前と比べてグンと伸びて、累積会員は現在1800万人いらっしゃいます。

この低価格キャンペーンは、アパホテルのような体力のある企業でないと実現しづらいと思います。うちも始めてからしばらくは赤字でしたしね。この機会に、今までアパホテルを利用したことのなかった方、例えば若い方などにもぜひ泊まってほしいと考えました。「競合のビジネスホテルよりも設備が進んでいて、きれいで、おしゃれで、郊外のロードサイドではなく都心の駅近の立地にあって、やっぱりアパは違うな」と感じていただくために今仕掛けたという狙いもありますから。

アパホテルはコンパクトな部屋に大きなベッドを置き、照明は明るくしています。そうすると、ベッドの上で本を読んだり、書類を広げたり、地図を見たりと、ベッドを寝るためだけでなく多目的に使うことができるのです。ミラーリングできるテレビも大変人気です。