安全な銀行…セブン銀行は自己資本比率20.3%
ランキング下位から見ていきましょう。つまり経営危険度が低い銀行から検討していきます。ランキングワースト2位のスルガ銀行は異次元緩和の中で、投資不動産向け融資で高い収益率を示していますが、不正融資が発覚しています。周りの銀行が、収益性が低下して衰弱しているなか、不正発覚前のスルガ銀行の収益性の高さは、ある意味、希望の星だったのです。お手本として見なされていた銀行が実は不正を働いていた。この事実は、銀行業界の厳しさを浮き彫りにしているといえます。
ランキングワースト4位のコンビニATMの代表格である、セブン銀行を見ていきましょう。自己資本比率20.3%とランキングの中で唯一、2ケタ%を記録しています。ROAも2.35%とトップで、純利益の増益は97.7%です。従来型の銀行のビジネスモデルを覆した、セブン銀行が上位にランクインしていることからも、既存の形式での銀行運営が厳しいことが伺えます。
銀行は基本的に個人から集めた資金を企業や個人などの「融資先」に貸し出し、「利子」を得ることで成り立っています。セブン銀行のビジネスモデルは、銀行業の根幹である「融資」というものがありません。個人から資金を集めて、融資もしない、店舗もないのです。セブン銀行単体の2020年3月期の経常収益は1202億円、そのうちATM受入手数料が1087億円です。従来の銀行のビジネスモデルとは全く違う道を歩んでいる銀行なのです。この新興勢力には、ジャパンネット銀行、住信SBIネット銀行、楽天銀行などが存在しており、この中で手数料競争が繰り広げられていますが、その競争は、従来存在している地銀の統合とは全く、別の次元で行われています。
危険すぎる地銀…「第4のメガバンク」構想とは
一方で、ランキング順位が高い銀行を見ていきましょう。1位みちのく銀行、2位島根銀行、3位清水銀行と続きます。青森・函館地盤の地銀である、みちのく銀行は、純利益の増益率がマイナス786%となり、20年3月期の純利益は赤字に転落しています。島根銀行も純利益の増益率がマイナス724%と、こちらも20年3月期の純利益が赤字転落となっています。
コロナの中で、銀行のオンライン取引が急浮上しています。この変化を敏感にとらえた地銀も存在します。ランキングこそ危険度18位ですが、富山第一銀行は4月6日に融資プラットフォームを提供するベンチャー企業のクラウドローンと提携しています。同行のカードローンを来店不要でネットから申し込めるようにし、6月をめどにインターネット上で自宅から預金やローンの取引を目指しています。やや遅いと思われるものの、外圧によって改革を進めている銀行もあるのです。
島根銀行や福島銀行など地方銀行と言えば、SBIホールディングスが出資し、フィンテックの導入や運用ノウハウの提供を軸に地銀連合「第4のメガバンク」を構想があります。この構想は、地域金融機関への共通システムの提供や収益力強化戦略の提供などを担う「SBI地方創生サービシーズ」と、地域の企業などへ投融資する「SBI地方創生投融資」の2社があり、その上に統括会社「地方創生パートナーズ」が置かれています。また、これとは別に資本提携先の地銀を取りまとめる100%出資の持ち株会社「SBI地銀ホールディングス」を設立する。SBIはすでに島根銀行や福島銀行、筑邦銀行、清水銀行の4行とは既に資本提携をしており、最終的に10行程度がこの地銀連合に参加すると想定しています。地銀再生の1つの道筋は、SBIによるものになるでしょう。
地銀には長い歴史と伝統があり、地域に根差した良い点がある。コロナ後も地方再生に欠かせない社会インフラだからこそ、地銀は先を見据えた基盤強化が急務だと言えます。