毎年プログラム内容を変えたがる企業の問題

日本企業の研修をお手伝いしていますと、担当者からもらう研修内容のリクエストは、この真逆であることがしばしばあります。やれ「レジリエンス」だ、「ワン・オン・ワン」だ、「エンゲージメント」だと、毎年のようにプログラムの中心的な内容を変えたがる会社があります。

日本でトレンドになるようなトピックは、その数年前にアメリカで話題になっていますので、こちらはすでにそのトピックの「その後」を知っています。もちろん「レジリエンス」や「エンゲージメント」などは大切なテーマです。しかし、たまたま書店で見つけた本、それもたった1冊だけ読んで、研修のトピックに入れ込もうとするのはいかがなものかと思います。

話題となっているトピックの本質を知らず、またその後どのような評価になっているかもフォローせず、そもそもそのトピックを研修で教えたり議論したりすることが、その会社や研修の参加者にとってどのような意味があるのか検討した痕跡さえないこともあります。

リーダーのオペレーションシステムをインストールする

そうした人材開発の担当者たちと話をするときに、私はコンピューターのソフトウエアを比喩として使います。これはさまざまな種類のリーダーシップ研修をクロトンビルで教えた結果、私の中で確信に近い考え方として確立されたものです。

ご承知のようにコンピューターのソフトウエアは、ウインドウズのようなオペレーティングシステム(OS)と、ワードやパワーポイントのようなアプリケーションソフトに分類できます。クロトンビルの研修では、このOSの部分に相当する能力を徹底して教え、また経験として体感してもらうのです。

このOSに相当する能力は、自己認識能力や共感能力、コミュニケーション能力といった、組織の全階層におけるリーダーが共通して持つべき基本的な能力です。これらの能力がOSとしてリーダーにインストールされていなければ、いくら最新のアプリケーションソフト(=はやりの研修トピック)をインストールしても、正常に動きません。