なぜメディアは小池百合子に群がるのか
ハッカーとは、既存のOSやシステムのバグや脆弱性を突いていたずらを仕掛けたり、情報の奪取やシステムの破壊を行ったりする人を指す。ハッカーは「システムのどこを攻めれば自分の目的が達成できるか」という脆弱性を見つけることに長けているわけだが、機を見るに敏と言われる小池氏も社会や政治、さらには世間や民心のどこに弱点があり、どう突けば自分にとって有利な状況を作り出せるかを見極めることに長けているのだ。
小池氏が政界に登場した当時、女性議員は少なく、その「希少性」は今の比では無かった。小池氏はミニスカートに今でこそ忌避されるハイヒールを履いて、政界に新風を巻き起こした。小池氏が「政界におじさん的な男性(と硬派な少数の女性)しかいない」という政界の脆弱性を突いたのだ。小池氏の学歴詐称疑惑などを再熱させた話題の書『女帝 小池百合子』に詳しいが、画面映えやメディアへの話題提供を第一に考えた小池氏の手法は大成功し、メディアはこぞって小池氏に群がることになり、新党ブームを後押しした。
民主主義の脆弱性を利用した「小池劇場」
かつて小沢一郎をして「ゲッペルスになれる」と言わしめた小池氏である。メディアハックはお手の物だった。聞こえのいい言葉に飛びつき報道する、派手な立ち回りをカメラが追いかける、というテレビ、新聞を含むメディア業界、ひいては民主主義の脆弱性を利用したのだ。これは「小池劇場」とも呼ばれた豊洲移転問題でも再演されることとなったが、その内幕は澤章『築地と豊洲』で細かに語られている。
さらに小池氏は「おじさん」たちの「若い女性だから育ててやろう」「女性だから裏切らない」「女性だから、まさか自分を取って食うことはないだろう」という思い込み(認識のバグ)をも利用した。
もちろんメディアの問題も「おじさん」たちの問題も、その脆弱性にパッチ(問題を修正するプログラム)を当てることができなかった日本社会そのもの、そして小池氏に何度でもハッキングを許す日本の有権者に第一の責任はある。