ゼロコロナの台湾、ウィズコロナの東京

小池氏を、いわゆる「利権や既得権益まみれ、世襲政治家やおじさんによる古い政治」と比べているうちは、彼女の手のひらの上で踊らされることになる。そうした舞台設定を用意される限り、女性である彼女は常に脆弱性を突くハッカー的な立場を取り続けることができるからだ。

小池氏を誰かとの比較で評定するのであれば、世襲でもなく、男でもない政界のリーダー、例えば台湾の蔡英文総統と比べるべきだろう。

東京の約2倍の人口規模である台湾の、蔡英文総統の新型コロナ対応は世界のお手本となるべき手際の良さだった。初期の段階からヒト・ヒト感染の可能性を除外せず、感染症が蔓延する前に封じ込め、現在は50日以上連続の「感染者ゼロ」を実現している。東京五輪を意識しすぎて対策で出遅れた小池氏は「ウィズコロナ」を掲げるが、台湾は「ゼロコロナ」を達成しつつある。

小池百合子は早々にマスクと防護服数十万枚を中国へ贈った

対照的なのはマスクの扱いだ。こちらも蔡英文総統は早くも1月下旬の時点でマスクの輸出を制限したうえ、増産を急いで国民に十分いきわたる量のマスクを確保した。収束を迎えて初めて、諸外国へのマスク貢献を行っている。

一方、小池氏は早々にマスクと防護服数十万枚を中国へ贈った。これによって都民の生命健康安全を売り渡したが、動機と言えば人道支援に名を借りた、単なる「都知事選に向けた自民党・二階幹事長との連携強調」だっただけのことというほかない。

1兆円を投じたという小池氏のコロナ対策は都民から支持を得ているようだが、自身が出演した啓発CMの総費用は8億円とも9億円とも言われる。当初小池氏が連呼していたワイズ・スペンディング(賢い支出)だったのか疑問だ。これ自体が「政治の不作為によって事態が悪化したにもかかわらず、そこから少しでもリカバリーできれば『よくやった』と思ってしまう」人間心理の脆弱性を突いた小池流ハッキング術の完成形ではないかとすら思えてくる。