コロナ禍の中、スマホアプリ経由でデリバリーの注文を新たに試みた人も多かったことだろう。これはイギリスに限らず日本を含む各国の人々がごく普通に行った形で、これにより、顧客の実店舗への来店が期待できない中、飲食店の収入確保に一役買った。だからイギリスのパブでの新たな試み、とうたったところで「アプリ経由でのデリバリーを店内でやろう」という考え方にすぎない。しかし、これまでリアル店舗でスマホ併用での注文、会計といった格好の取り組みは意外と少なかったのではないだろうか。

ビールを樽ごと買って家飲みを楽しむ強者も

新型コロナの感染が広がるや否や、イギリスの人々はいきなり「パブでの酒飲み」が禁じられた。あらゆるタイプの飲食店が閉鎖を命じられたからだ。3月下旬から8週間近くの間、公園での短時間運動くらいしか認められず、交流を目的とした他人との接触が禁じられたため、スーパーでビールを買って手酌で飲む以外方法がなかった(5月下旬にようやく緩和され、他人とも公園などでビールが飲めるようになった)。

川沿いでビールを楽しむロンドン市民(筆者撮影)

日本でもコロナ禍のさなか、オンライン飲み会が存分に市民権を得たが、イギリスでも「ネットを介した知り合いとの飲み会」がずいぶんとはやった。パブ向けに売れなくなったビールを樽ごと通販で買って、それに蛇口を付けて自宅で楽しむ強者もいたという。「オンライン飲み会なら、帰る時間を気にしなくて良いし、飲酒運転のリスクもない」(60代男性)。酒飲みの考えには国境がない。

イギリスの場合、普段からこうした「友だちとの飲み」を楽しむ年齢層が意外と高い傾向がある。そもそもデジタルデバイスに弱いとされる高齢者がネット飲み会に回ったケースも結構あったという。「パブでは絶対に一緒に飲めない、遠いところにいる友だちともネットでつないで飲めた」との声も聞く。

ネットでの飲み会に慣れた高齢者たちが、パブで再会して「デジもの自慢」をするかもしれない。筆者は、パブで仲間同士集まる一方で、その場で遠くの知り合いや友だちとZoom(ズーム)などでつなぐ「ネットとリアルのハイブリッド飲み」がパブで始まる気配を感じている。

プレミアリーグは観客を入れて再開予定

パブと共に、多くのイギリス国民はプロサッカー・プレミアリーグの早期再開を期待している。今のところ、6月17日に再開初戦が行われる運びとなっている。

プレミアリーグの中継は通常なら、有料チャンネルでしか見られないため、パブでご贔屓ひいきチームの試合を見に行く、というファンも多い。今年に限って、多くの試合を無料地上波でも中継するというアナウンスも出ているため、パブでの「観戦客による3密」を避けようとする動きがある。とはいえ、パブでのサッカー観戦もほどなくして実現しそうで、ようやく人々が「日常に戻る」ことを実感するのではないだろうか。