「COVID-19」警報レベルから推定される、人々とパブとの「距離」

ソーシャルディスタンスを「監視」するスタッフも

では、イギリス大手のパブ店舗ネットワークを持つ「JDウエザースプーン」がwithコロナでの再開で打ち出した施策をざっと紹介してみよう。

・顧客は店に着いたら、備え付けの消毒液を使って手を消毒
・注文するバーカウンターまでは一方通行で進む
・スタッフはマスク、手袋とゴーグル着用
・注文は、スクリーン(透明のついたて)の後ろに立つスタッフに
・支払いは現金でなく、カードや携帯払いが望ましい(専用アプリでの注文を奨励されている)
・飲み物は別のカウンターから出てくる、もしくは店員が運ぶ
・テーブルの間隔は可能な限り広げる、もしくは間についたてを立てる
・顧客は「密の防止」のため、屋外のビアガーデンへ出るのが望ましい
・スタッフは顧客がソーシャルディスタンスを守っているかを「常に監視」
・食事のメニューは使い捨てバージョンを制作
・塩やコショウ、ケチャップなどは瓶入りでなく、小袋で提供

パブでは従来、自分で自由に空いている席を探し、そこのテーブルに書かれた番号を記憶したのち、バーカウンターでスタッフに飲み物と食べたいものを注文する。注文品の総合計をカウンターで支払い、飲み物はその場で引き取り、食べ物はテーブル番号を伝えて待つとやがてそこに届けてくれる——というのが一連の流れだ。

感染流行前のパブの様子
筆者撮影
ラグビー観戦の前にパブでビールを楽しむ人々(感染流行前)

順番を待つ間、見知らぬ人とおしゃべりしながら待ったりするが、他人との距離を2メートルも空けるのでは、列を作るスペースを設けるにも無理がある。そこで考案されたのが「アプリで頼んで、注文品をテーブルで待つ」という方法だ。

店内にいながら、注文も決済もアプリで完結

日本では、ほとんどの飲食店で「店員が注文を取り、食事が終わったらレジでお金を払う」という格好で運営されている。もっともファストフード系のお店では自動販売機による食券方式もあるが、食券を買った顧客がどこに座って何を食べるか、と確認する作業が残る。

withコロナのイギリスパブでは、これを一気にショートカットして「アプリに誘導し、注文と決済を一気に済ませる」というところへの到達を目指す。これならウイルスの伝播のリスクがある現金への接触が防げるだけでなく、会計の手間の解消、注文取りにあてる人手の削減など、あらゆるところで省力化ができる。あるいはこれがwithコロナの時代における「ニューノーマル」で生まれる新たな常識となるかもしれない。