「在宅勤務」は「勤務」であり、「育児休暇」ではない

このわずか1分足らずのやりとりに〈自宅学習〉の闇が潜んでいる。恐ろしいのは、学校側が全面的に「勉強は親が教えるもの」と決めつけている点だ。なんなら「お姉ちゃん、お兄ちゃんが教えるのでもいい」。もちろん丸つけも親、間違った箇所の解説も親の役割だ。

だが、先生方は誤解している。すべての家庭に家庭教師役をできる意欲と時間を持つ大人がいるわけではないということを。「在宅勤務」は「勤務」であり、「在宅休暇」でも「育児休暇」でもないのだ。在宅勤務の合間には、炊事、洗濯、掃除、育児が待っており、家庭内寺子屋を設けるだけの余裕まではない。

実際に私も試みたが、ライターとして仕事の締め切りを気にしつつ、子どもの横に座り、「行」「南」「雪」「書」「読」といった漢字を教え込み、国語の音読を聞き、書写を確認していく作業はなかなかに大変だった。算数では表やグラフの存在意義から、足し算・引き算のひっ算の便利さ、リットルやデシリットルの概念、さらには九九を一段ずつ暗唱させていく。ご丁寧に「生活」「道徳」「植物の観察日記」まであるのだ。

高学年家庭は、内容的に親が教えられない家庭も

きょうだいがいれば、それぞれ相手もしてやらなくてはならない。高学年家庭からは、「親自身が教科書で勉強しながらでないと、もはや教えられない」という声も届いてくる。

中高校生なら、ある程度教科書を見ながら独学・自習も可能だろうが、漢字もまともに読めない小学校低学年に、学校教科の独学はほぼ不可能だ。

そもそも両親が家にいるとも限らない。夫婦ともに医療従事者で、子どもたちだけ祖父母宅に疎開させている家庭もある。ひとり親世帯だってあるのだ。