感染者ゼロの岩手県の人気が上昇か
これらの地域からの観光客を迎えたい、もしくは図らずも来てしまう状況に対して、観光地ではどのような対応準備が必要か。中国で見られた傾向を振り返りながらから考えてみる。
5月連休の中国国内旅行では、屋外型歴史的遺跡、山岳エリア、サファリパーク、古い街並み、農家民宿ツアーやオートキャンプ場など、アウトドア型のレジャーが選好されたという。
2019年の宿泊旅行統計調査(観光庁)では、関東1都3県、関西2府3県、東海4県、北海道など16の都道府県で中国人客のシェアが1位だったように、これまでは大都市圏を中心としたメジャー観光地が人気の中心だったが、その傾向にも変化が訪れるかもしれない。「人が少ない」ということを売りに地元の観光資源を磨き上げる地方部に、これまでよりチャンスが広がるだろう。
外国人旅行者の立場としても、世間で旅行自粛ムードが完全に晴れないうちにいち早く日本に旅行し、ウイルスをもらって帰ってきて自宅監禁、というような不名誉は避けたい。そのため、感染リスクが低い旅行先ということがまず最優先事項になるだろう。いまだに感染者数がゼロの岩手県が、日本ツウの個人旅行客の間で安全、安心な旅行先として好まれるかもしれない。
2019年、岩手県に宿泊した外国人のうち台湾が55%、中国が17%で合わせて合計72%という割合の高さは静岡県に次ぐ。都道府県別の外国人宿泊者数では全国34位の岩手県が、たとえ当地の観光関係者が意図せずとも、外国人人気が上昇する可能性もある。
沖縄や宮崎にも注目が集まる
ENtrance株式会社の王代表は、今後の中国人による訪日旅行トレンドをこう見る。
「5月の連休、中国国内でもリゾートトラベルが人気だったので、日本国内では沖縄や宮崎に注目しています。自然や温泉といった地方部のヘルスツーリズムも人気となるでしょう。岩手はスキーや温泉も充実しているので、今後人気になる可能性はありますね」
中国国内でも団体旅行はまだ解禁されておらず、家族単位での旅行が主流になっている。
「今後は大型バスによる大人数の団体旅行はしばらく敬遠される可能性がある一方、個人や家族グループ×2組くらいの小人数グループの間で、日本旅行人気は間違いなく復活するでしょう。一方、密を避けた地方部への旅は、現地での二次交通が不便になります。中国の運転免許では日本国内で運転できないため、ドライブ旅行はできません。地元のタクシー会社やバス会社による小人数グループ向けの輸送サービスが、地方周遊の旅費が割高にならない解決策としてニーズが出てくるでしょう」(王氏)