諸外国からは前のめりに予約が入っている

感染ピークの時期をなるべく遅らせるという政府の方策により、新型コロナウイルスのActive Cases=現感染者数(感染-回復-死亡)のピークは日本では5月頭であるが、中国は2月中旬、韓国は3月中旬、台湾や香港、オーストラリアは4月上旬といずれも日本より早かった。その分、観光への関心も、慎重な日本国内関係者に対して、海外の旅行者の方が「気が早い」のは自然な流れだ。

筆者のグループが5月の段階で海外系オンライン旅行会社にヒアリングしたところ、一部では台湾、香港、タイ、オーストラリアなどからの予約が、秋口から年末に向けて入り始めているという。また、独立系旅行会社にも欧州や米国から日本に行きたいという問い合わせは徐々に増えているようだ。

中国国内では現在、行き先を省内に限る近距離旅行だけが解禁されており、日本政府も現在は発行済みビザの効力を停止しているため日本旅行予約の動きは見られないが、中国人には2018年の1年間だけで695万件のビザが発給されており、一定の条件のもと3~5年有効となる数次ビザの発給数は2015~2018年の4年間で124万件にのぼる(2019年統計は未発表)。潜在的には200万人前後の数次ビザを持つ訪日予備軍が、日中間の渡航解禁を待っていると思われる。

「世界のスピード感」は想像以上に早い

田端浩観光庁長官は5月20日、国内旅行商品購入者1人につき1泊2万円を上限に旅行代金の50%が割引される「Go To トラベル」キャンペーン(事業費1兆3500億円)の開始時期を、2カ月前後先になるとの見通しを示した。日本の観光関係者は、緊急事態宣言の全面解除後から年内は首都圏や関西発をはじめ全国からの国内旅行需要取り込みに軸足を置きつつ、アジアや豪州からの年内来訪再開へ向けて準備を並行して進めるのが、現実的な観光復興のタイムラインのようだ。

熊本県観光協会連絡会議が4月末、県内の宿泊施設、飲食店、交通など観光関連事業者に行った調査によると、日本人旅行者を「積極的に受け入れるべき」「受け入れるべき」という回答の合計が62%の一方、外国人旅行者に関しては「来ないでほしい」「あまり来ないでほしい」という回答は合わせて56%にのぼったという。

ひとたび相手国や地域との渡航制限が解禁された先には、入国した旅行者がどの県に向かうかは本人の自由であり、いざ地元にやって来ても旅館業法の定めで宿泊事業者は定められた正当な理由なく宿泊を断ることができない。

緊急事態宣言期間中には一部の地方で「県外ナンバーおよび帰省者、お断り」と書かれた飲食店の張り紙も見られたが、もしも一店主が「Japanese Only」などと店頭に掲示し、その画像が訪れた外国人によってSNSにでも投稿されようものなら国際問題となり、店だけでなくその観光地一帯や日本そのものも批判の対象になりかねない。

ワクチンの開発に18カ月あるいはそれ以上かかる観測で第2波、第3波への警戒は今年も来年も続く中も、国や地域間の往来は段階的に解禁される。株式市場で行き場を失った待機マネーが次の投資先を探すように、外出レジャーを我慢し続けてきた旅行者は安心できる渡航先には一定数すぐ戻るだろう。

※編集部註:初出時、「ウイルスの開発」となっていましたが、「ワクチンの開発」の間違いでした。訂正します。(6月4日8時30分追記)

外国人を歓迎したい観光地は出遅れないよう、そうでない地域は急に外国人が戻り始めても慌てないよう、こちらの想像以上に早い「世界のスピード感」を認識して、地域で意思統一をして今から対応準備を進める必要があるだろう。

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