外の光を感知できない場所で何日も過ごすとどうなる?
そこで、食事時間はランダムで食べたいときに食べる、テレビやラジオ、インターネットなど時刻がわかる機器はNG、ビデオやDVDなら観ても構わないというルールで一定期間生活してもらいました。
いわば、洞窟のような場所に隔離されて生活しているようなものです。それでも、ラットやマウスと同じように、1日に近い一定のリズムで睡眠と覚醒を繰り返します。
この実験からも、わたしたちの睡眠・覚醒が体内時計で制御されていることがわかります。隔離された環境下で時刻と関係なく自由に生活してもらうと、寝つく時刻と目が覚める時刻が1日ごとにわずかずつ遅れていくことが観察されます。
ヒトの場合、全くの暗闇では生活できず、外界の情報を完全にシャットアウトすることは難しいので種固有のリズムの算出は難しいのですが、最近のより厳密な実験での観察値では、人間の固有のリズムは先にもふれたように約24.2時間とされています。
目の見えない人の半数以上はフリーラン
フリーランになっている人に多いのが、視覚に障害がある人たちです。盲目の人の6~7割はフリーランです。
網膜に機能障害があると光を感知できないため、光のない部屋に隔離された状態と同じになるからです。ただし、そういう人でも社会生活のなかにいることで、ほかの人たちの生活のリズムに合わせることができます。よって、フリーランになることを避けられます。
フリーランの人は、体内時計がリセットされないため、1日を24時間より少し長い周期で生活します。たとえば1日20分後ろへずれる場合は、6日で120分(2時間)の計算。1カ月で約10時間、2カ月半で約1日ずれることになります。
研究者のなかには、ときどきフリーランの人がいます。わたしの身近な研究者もフリーランで、朝出てくるのが少しずつ遅くなって、そのうち午後から出てくるようになって、しばらく経つとまた朝から出てくるということを繰り返していました。
研究者のように比較的勤務時間を自由に決められる職業なら許されますが、一般企業で働いている人は仕事を続けていくことがむずかしくなるかもしれません。