だが、一方で韓国政府による公式謝罪について慎重論もある。釜山外国語大学教授の李光洙(イ・グァンス)氏は「韓国が加害者である」ことを前提としつつ、国際関係の原則論にのっとり、公式謝罪に懐疑的な見解を示している。
一つは、韓国がアメリカの協力国に過ぎず、ベトナム戦争での影響力が小さかったとする点。実際、ハノイの戦争博物館には韓国軍関連の資料が1点しかないというものだ。もう一つは戦後のベトナムがドイモイ(刷新)政策を進め、経済の立て直しとともに国際協力への参加を掲げているため、ベトナムが国家として謝罪を受け入れない以上は、韓国政府に謝罪を求める動きは国際ルール上は間違いであると指摘した。
近年でもネット上で起こる韓国vsベトナム
政治ジャーナリストの趙甲濟(チョ・カプチェ)氏はさらに強硬だ。「歴代大統領が謝罪したのになぜさらに謝る必要があるのか」と主張し、韓国のベトナム派兵の正当性があったとして「60、70年代に国家建設に励んだ世代の思い出を奪う可能性がある」と謝罪の態度を示す文大統領の姿勢を批判している。
一方で、近年はベトナム・韓国両国のネット民による小競り合いは起きており、新たな火種になると懸念する向きもある。
韓国「亜州経済」が報じたところによると、新型コロナウイルス禍に際し韓国のニュース番組で「大邱発の韓国人20名がダナンで隔離され監禁」、「ビザ免除中断」と報じられると、ベトナム国内のSNS上では「20人の韓国人は謝罪しろ」「テレビ局も謝れ」といった話題が多くあがった。これには韓国のネット民も「やってみろや後進国が」「誰のおかげで食えてんだ」「ベトナムのサムソンを撤収させよう」などと応酬。それらが再びベトナム語に翻訳され、ベトナムのSNSに拡散されるに至った。これを受けて韓国外交部は「隔離は了解のうえだった」と表明とし、ダナン市長も20人の韓国人の帰国の際に、手紙を出して謝罪するまでに至っている。